№318(2005年9月5日号)
増田俊男事務局 : http://www.chokugen.com
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SICクラブ http://www.sunraworld.com
私の「夏相場宣言」は当たった!
8月になって日本の株価は様変わりして上昇に転じた。私が夏相場を宣言した背景にはいろいろ理由があったが、FRBグリーンスパン議長の戦略的金融政策もその一つだった。FRBは2004年6月から今日まで、連続10回FF金利を上げてきた。グリーンスパンが魔術師なのは、合計2.5%の実効金利目標を上げ続けながら、長期金利(10年物国債)を市場で逆に0.5%(4.16%に)下げたことだ。
高金利政策を続行している間、短期金利は常に長期金利より高止まりしてきた。長期金利が低めだと成長産業(リスク産業)に有利であり、短期金利が高めだと保守的な資産産業(賃貸業など)に有利である。双方を有利にする絶妙な金利政策である。利上げ政策で長期金利が上がらないのだから、金融政策が市場に効いていないとの理由でさらなる利上げ余地を残し、これをドル高要因にして原油高騰への抵抗力にする。
一方、長期金利の低迷は維持し、住宅ブームを続行させることでさらに雇用と賃金を上げて消費を伸ばす。消費の伸びは企業収益を増大させるから好況が持続する。魔術師グリーンスパンならではの驚くべき辣腕ぶりである。アメリカの経済の持続的好況はまた日本経済に未曾有の好況をもたらしているのである。
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日本は世界最高の市場に選ばれた!
資本主義経済においては、企業業績が好く、好況になれば株価が上がると信じられてきた。ところが今日は、過剰余剰資金の市場から市場への移動動向で株価が決まる。過剰資金は有望な市場を求めて移動する消極的な動きから一転して積極的に有望市場を作るようになった。つまり世界の余剰資金が戦略的な動きをするようになったのである。
世界の余剰資金のマネージャーたちは、投資するための有望市場の分析から有望市場を創造するための分析をするようになった。そこで彼らは、2005年以降の有望市場の創造に最適な条件を兼ね備えた市場は日本以外にないと結論したのである。
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世界の投資最適市場の条件
潰れそうな上場会社の株価が上がるのはなぜだろうか。それは潰れそうな会社が上場されている市場の時価総額が上がったからである。つまり市場に流入する資金が流出する資金より多いから時価総額が増え、株価が上がるのである。市場から資金が流出すれば、最高益を上げている企業の株でも下がる。株価は業績ではなく、過剰流動性の移動で決まることになった。
最有望市場を作るには、まず市場に投入する資金が必要である。資金には2種類あって、すでに市場に入っている資金と市場に入ることなく眠っている資金とがある。市場内の金は市場から市場を移動するから、ある市場から別の市場に移動すると出た市場はマイナスになり、入った市場はプラスになり、そのプラスとマイナスを足すとゼロになる。したがって、有望な市場を作るのに市場内資金の移動では、有望市場ができてもやがて利益確定で資金が出て行くから長持ちしない。
長期間にわたる有望市場を作るには、市場外の「寝ている金」がなくてはならない。「800兆円も現金を寝かしている国は日本しかない!」 ペイオフ解禁も郵政民営化もすべて、日本の寝ている金を市場へ移動させるための政策以外の何ものでもない。
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日本株の外人買いはとまらない!
日本に眠っている総預金高約800兆円を持つ日本人個人は、100人に7人しか株式投資をしていない。一方、アメリカでは成人2人に1人が株式投資家だが、眠っている資金がないので長期有望視市場になり得ない。だから外人は日本の成人の2人のうち1人が株式投資家になるまで日本株を買い続けるのである。時間と共に眠れる800兆円が少しずつ株式市場に流れ込み、株式市場の時価総額を上げていく。すなわち外人投資家の投資資産が時間と共に増大して行くのである。いま世界の投資家が「日本株を買わない者はバカだ」と言っているのは当然過ぎるほど当然なのである。
ブッシュ米大統領と小泉首相の合意「日米投資イニシアティブ」は、まさに日本の眠れる金を市場に移動させるための日米合意。最高の条件を備えた日本市場が有望市場として始動する前に、外資(アメリカ)が日本買いを終わらせるために必要な法整備を目的としたものである。だから同合意書が締結された2003年から今日まで、外資は日本株を買い続けているではないか。
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アメリカの中国経済つぶしが始まった
当面のアメリカの目標は対中国軍事包囲網を固めること。経済的には、中国経済最大の弱点であるエネルギー(原油)価格を上昇させることで、中国経済に圧力を加えることである。原油価格を高騰させることによって、かつて(1940-41)原油禁輸制裁を受けた日本が真珠湾攻撃に追い込まれたように、またもやアメリカは中国を窮地に追い込もうとしている。中国が原油価格
高騰に対抗するには、アメリカがドル高政策を採っているように中国も人民元を上げるしかないが、人民元が上がれば中国経済は失速するというジレンマに陥る。
アメリカは今、中国がやがて軍事力に訴えざるを得なくなるまで、真綿で首を絞めつけるように中国経済を追い込む。私が大阪の講演後の懇親会ではっきり述べたように、原油価格は1バーレル100ドルを目指すだろう。ロシアは原油価格高騰で大きな利益を上げながら、対ロシア原油依存度を高める中国に対して支配力を強める。その結果、ロシアはアメリカに対して中国に関する交渉権を強める。中国では原油1バーレル70ドルの段階で電力不足となり、物流をはじめ中国経済全体が波乱状態に陥ろうとしている。
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邦銀の不良債権解消の意味
竹中平蔵金融担当大臣(当時)は、大臣就任早々邦銀に対して不良債権解消を強く求め、業務改善命令など圧力をかけたので、ほとんどの邦銀は2005年早期の期限を待たずほぼ目的を達成した。そのため邦銀は2005年から国際金融市場へ、特に中国への融資を拡大することになり、今や各行は中国での支店網の拡大競争を展開している。実は2005年は、アメリカが過去の中国投資および得た利益を本国へ移管することに決めていた年であった。2005年末までに中国投資と利益を本国へ持ち帰った場合、税務上優遇する時限立法があったのである。
つまり竹中大臣は、アメリカが中国から資金を引き揚げたギャップを邦銀に穴埋めさせようと考えていたようである。また、アメリカの圧力で人民元切り上げをさせたが、これでアメリカ資金の引き揚げに為替差益の上乗せが可能となった。アメリカは人民元切り上げ、原油価格高騰、輸入関税で中国経済に圧力を掛けながら、一方日本には対中資金投下を促す両面作戦を採っている。アメリカはいつでも中国経済を崩壊させるフリーハンドを手にしながら、日本には中国経済の延命策を採らせるのである。
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なぜ外人は日本株を買い続けるのか
外人が継続して日本株を買うのは、日本で眠っている個人預金高約800兆円を株式市場へおびき出す戦略である。いわば呼び水。市場を支配する外資(アメリカ)にすれば当然のこと。外人買いと新規個人投資家参加のシーソーゲームでニッケイ平均は3万円を超えて上げ続けるだろう。中国経済崩壊の日まで……。
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本当のアメリカを露見したハリケーン
原油価格が史上最高値70ドルをつけたのと時を同じくして、ハリケーンがルイジアナ州とミシシッピー州を襲った。町は崩壊状態、数千名の犠牲者が出そうである。全米のテレビは終日ハリケーン情報で持ちきりである。犠牲者数は9.11を上回りそうだと言われている。いま私はS.F.だが、ガスステーションの料金プレートは3ドル台(ガロン当たり)になった。3ドルになると低所得者の可処分所得の20%が吹っ飛んでしまう。私は今夏大阪での講演後の懇親会で原油価格100ドルの予想をしたが、このままだと本当に100ドルへ向かいそうである。アメリカには2億2千万台の車がある。もし今、全車が平均10ガロンのガソリンを入れたら、アメリカの原油備蓄量がゼロになる。おまけに天然ガスの備蓄はない。実は、こんな分かり切った結果を、アメリカは始めから知っていたのである。アメリカは原油需要の40%を輸入に依存しているが、実は埋蔵量は十分あったのである。今まで原油は供給過剰だったから(消費者は王様の原理で)価格支配のためと、国内生産コストが高いことからあえて買い(輸入)に回っていたのである。
中国を始め、後進国の経済発展で世界の原油需要の継続的増大と産油国の埋蔵量が枯渇し始めたこと。そこへ原油精製能力と備蓄量不足が追い討ちをかけ、原油価格暴騰が止まらなくなってきた。このときをアメリカは4万兆立方フィート(20年分)の埋蔵を残しながら待っていたのである。原油の高騰のおかげで、アラスカ、テキサス、その他沿岸の大油田開発プロジェクトに反対してきた環境保護団体と住民は口を閉ざした。「(ガソリン代で)死にたくなかったら、賛成しろ」では誰も反対できない。
もう一つ、住民や慈善団体が口を閉ざした例がある。ルイジアナとミシシッピーの河岸周辺大都市開発である。議会は住民や環境、文化団体の反対で廃案にしていたが、ハリケーン後同法案は復活、可決された。いま災害地を金融・不動産業者が札束をカバン(バッグ)に入れて走り回り、被災者に土地を担保に金を貸しまくっている。ハリケーンのおかげで邪魔な人間(いま政府は他州に移住させている)と建造物の掃除ができたので、空となった空間に政府と産業界が共同で数十兆円の大都市開発をしようということ。「道に血が流れているところは買い」! これがアメリカの資本主義の鉄則だそうだ。
アメリカ一辺倒の小泉さんは「本当のアメリカ」と「本当の資本主義」を本当に知っているのだろうか?
*「カーペット・バッガー」という言葉がある。昔カーペットの素材で作ったバッグに現金を入れて災害地に乗り込み、土地や宝石を担保に金を貸しまわり、借りた者は結局身包みはがれたことに由来する。今ニューオルリンズはカーペットバッガーがあふれている。
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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)
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