台風15号による千葉の漁業被害4億3000万円以上 アジやマグロ廃棄、アワビも死ぬ
毎日新聞
2019/09/18 17:46
台風15号の強風で横転した漁船=千葉県南房総市で2019年9月13日午後4時20分、加藤昌平撮影© 毎日新聞 台風15号の強風で横転した漁船=千葉県南房総市で2019年9月13日午後4時20分、加藤昌平撮影
9日に上陸した台風15号は、千葉県の漁業にも深刻な被害をもたらした。停電で魚の冷凍設備や養殖場が機能停止し、大量の魚を捨てざるを得なくなり、特産のアワビも死んだ。県のまとめでは水産業の被害総額は少なくとも4億3000万円(17日現在)に上る。関係者は「どうやって生きていけばいいのか」と悲痛な声を上げる。
房総半島南部の鋸南(きょなん)町にある保田漁業協同組合直営の海鮮食堂「ばんや」。新鮮な海の幸を求めて県外から客が来る人気店だが、台風で屋根や窓ガラスが吹き飛び、再開のめどは立っていない。加藤周平事務長は「漁協の一番の収入源なのに……。1~2カ月は再開できないだろう」と頭を抱えた。
魚を保存する冷凍設備も停電したため、食堂で提供する予定だったアジやマグロなど約600キロを廃棄した。沖合に設置していた定置網は切れ、近くの漁港はがれきが積み上げられたままだ。加藤事務長は「もうお手上げだ。自力での復旧は難しい。国や県の支援がないと」と肩を落とした。
同町の勝山漁協でも、養殖していたマダイやシマアジがほぼ全滅した。沖合にある計10基のいけすの酸素補給機などが停電で止まり、水面を埋め尽くすほどマダイの死骸が浮かんだ。「房州黒あわび」のブランドで知られ、アワビを稚貝から育てている南房総市の東安房(ひがしあわ)漁協の蓄養場は停電でいけすの循環が止まり、冷却装置も動かなくなった。出荷を控えたアワビやイセエビ、サザエなどが大量に死んだ。
場長の渡辺靖浩さん(55)は「アワビの漁期が今月5日に終わり、12月ごろまで出荷できるよう大量に用意していたのに。最悪のタイミングだ」と嘆いた。【加藤昌平、中島章隆】