【台北=田中靖人】オーストラリアのモリソン首相は3日、訪問先の南太平洋のソロモン諸島でソガバレ首相と会談した。豪首相のソロモン諸島訪問は2008年のラッド首相以来。ソロモン諸島は台湾と外交関係があるが、4月の総選挙で新首相に就任したソガバレ氏は中国との国交樹立を検討している。モリソン氏の訪問は、地域での中国の影響力拡大を阻止する狙いがある。
豪首相府によると、モリソン氏は「太平洋島嶼(とうしょ)国の平和的な独立と主権のための支援」を表明。今後10年間で2億5千万豪ドル(約188億円)の経済支援やソロモン諸島首相府の建築補助などを約束した。モリソン氏は5月27日の声明で、太平洋諸国は「豪州の戦略的展望の中心であり前線だ」と強調していた。
ソガバレ氏は4月の議会選(定数50)後の指名選で、副首相から4度目の首相に就任。地元テレビ局の取材に、台湾との関係について「強固でも不変でもない。外交関係の原則はどう利益を得るかだ」と見直しを表明した。見直しは前政権時から浮上していたが、現在連立政権を組む政党の議員は、半年以内に中国と国交を樹立しなければ不信任案を提出すると圧力をかけている。
中国はソロモン諸島の輸出額の6割超を占め、貿易相手国として第1位。台湾と外交関係がある17カ国のうち、太平洋島嶼国が6カ国を占める。ソロモン諸島はこの中で最大で、同国が外交関係を台湾から中国に切り替えれば、地域でドミノ現象が起きるとの指摘もある。
一方、豪州は太平洋島嶼国への中国の影響力拡大を警戒。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が17年、ソロモン諸島に高速インターネットの敷設を提案した際は直ちに対抗策を提案し現在、1億3700万豪ドル(約103億円)を投じてパプアニューギニアを含む海底インターネットケーブルを建設している。