国の文化審議会(佐藤信会長)は18日、兵庫県加東市の朝光寺の本尊で、鎌倉期の仏像「木造千手観音立像」と、同県朝来市の池田古墳から出土した水鳥形埴輪など27点の「兵庫県池田古墳出土品」を、国重要文化財(美術工芸品)に指定するよう文部科学相に答申した。県内の国重文に指定される美術工芸品(国宝を含む)は計365件になる。
木造千手観音立像は高さ約180センチで、ヒノキの寄木造。朝光寺に2体ある本尊(秘仏)のうち「西本尊」にあたる。表面に金箔が貼られ、引き締まった表情や衣装の表現技法などから、鎌倉中期作とみられる。
像の土台部分には、2018年に国宝指定された三十三間堂(京都市)の千手観音立像のうち、鎌倉期にあった火災後に補充された874体の一部と同じ墨書きが残っている。
県立歴史博物館学芸員の神戸佳文さんによると、三十三間堂では室町期に像が1体補充されていることなどから、朝光寺の像はそこから持ち出された可能性が高いという。神戸さんは経緯について「播磨で力を持っていた赤松氏が関与したか、朝光寺の住職が三十三間堂とつながりがあったのではないか」と推測する。
池田古墳は、4世紀末~5世紀初めごろに造成されたとみられる但馬地域最大(全長約135メートル)の前方後円墳。家形や船形などの形象埴輪や、土器などの小型模造品が多数出土している。
儀礼の場として使われたとみられる中央南側の「造出」と呼ばれる場所では、死後の世界に魂を運ぶ役としてカモやハクチョウなどを模した水鳥形埴輪が全国最多の24体以上出土。北側からは、アケビとみられる食物や土器の模造品が出土しており、飲食にまつわる儀式の場だったとみられる。
古墳の被埋葬者は不明。県立考古博物館の和田晴吾館長は「但馬地域の王が埋葬されていた可能性が高く、古墳の北と南で違った性格の祭礼が催されていたことを裏付ける貴重な文化財」としている。
国登録文化財では、同県宝塚市の邸宅「石田家住宅」(非公開)の主屋と屋敷門の計2件を答申した。(井上 駿)