中国の経済成長率は減速傾向が鮮明になった。日本の対中輸出額は年間15兆円、中国への進出企業の拠点数は3万以上に上り、日中の経済関係は深い。今後、米中貿易摩擦で中国経済がさらに減速すれば、日本企業に出始めている悪影響が拡大する恐れがある。
「昨年11、12月の受注、売り上げともに落ち込みが尋常ではなかった。46年間経営しているが、月単位でここまで落ちたのは初めてだ」。日本電産の永守重信会長は17日の記者会見でこう述べた。
同社は、平成31年3月期の連結最終利益予想を前期比14%減の1120億円と、従来の増益予想(12%増の1470億円)から減益予想へ下方修正。中国で主力のモーター販売などが落ち込んだためで、永守氏は、米中貿易摩擦などによる中国の景気低迷が背景にあるとした。
一方、日本工作機械工業会の見通しによると、31年の受注額は前年比約12%減の1兆6千億円に落ち込む。米中貿易摩擦などにより、主力販売先である中国企業の設備投資の動きが鈍化しているためだ。
飯村幸生会長(東芝機械会長)は見通しを明らかにした9日の賀詞交換会で、「中国は半導体景況の悪化、スマートフォン需要の低迷、ますます鮮明化する米中貿易摩擦などで、設備投資の手控え感が出てきている」と指摘した。
米中摩擦で懸念されるのは、昨年9月に発動された2千億ドル(約21兆9千億円)相当の中国製品に対する10%の制裁関税が、今後25%へ引き上げられるかだ。引き上げられれば、対米輸出の減少で中国での企業の収益や賃金の下落につながり、中国の成長がさらに減速しかねない。
中国経済は日本経済と関係が深く、29年度の日本の対中輸出額は15兆1873億円と国別首位。中国に進出している日本企業の拠点数も約3万2千に達する。
中国経済の悪化が加速すれば、日本からの輸出減少や進出企業の業績低迷につながり、日本経済全体の成長や景気の鈍化も懸念される。(山口暢彦)