昨年12月16日に開かれた「三田国際マスターズマラソン」で、心室細動により倒れた男性ランナーの奇跡的な救命劇があった。男性の近くを参加者の医師が走っていたほか、兵庫県三田市消防本部(同市下深田)に帰る途中の救急車が偶然近くを通りかかった。男性は順調に回復しているという。
同日午後0時25分ごろ、ゴールまで約2キロ地点の三田市貴志の県道で、同県西宮市の40代男性が倒れ、心肺停止となった。この時、レースに参加していた京都府綾部市立病院の診療部長、沢辺保範さん(57)=京都府福知山市=が近くを走っていた。すぐに駆け寄り、心臓マッサージを施した。
ほぼ同時刻、近くの三田市民病院に患者を搬送し、市消防本部に帰る途中の救急車が現場を通った。救急隊員が自動体外式除細動器(AED)を持って救命に加わり、男性を市民病院に運んだ。沢辺さんは救急車に同乗して病院に向かい、男性は間もなく意識を取り戻したという。
同マラソンでは2004年、25歳の男性がゴール直後に急性心不全で倒れて亡くなった。当時はAEDがなく、事故を教訓に本格配備された。参加者にAEDを使ったのは3回目で、いずれも救命に成功している。
病院に運ばれた男性は、立ち上がろうとするまでに回復。それを見届けた沢辺さんはレースに復帰した。コースの通過制限時間を超えていたが、走りきった。
12月27日には三田市職員が勤務先の病院を訪れ、沢辺さんに感謝状を手渡した。マラソン大会の完走証も受け取った沢辺さんは「当たり前のことをしただけ。アップダウンが激しいコースを来年も走りたい」と話したという。(高見雄樹)