【緊迫・南シナ海】インドネシア、仲裁裁定受け地図を改訂
産経新聞
14 時間前
29.07.19.
【シンガポール=吉村英輝】南シナ海における中国の主権主張を全面否定した、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の昨年7月の裁定を受け、インドネシア政府は、南シナ海の排他的経済水域(EEZ)などを明示した自国地図への改訂を行う。中国が裁定を「紙くず」と無視し同海で一方的な軍事拠点化を続けるなか、国際法に基づく対抗措置を具体化させた格好だ。
インドネシア国営アンタラ通信などによると、海事調整省は14日、2005年以来となる改訂地図を発表した。隣国シンガポールやフィリピンとの協議で確定した国境線などを追加。さらに、ナトゥナ諸島北200カイリのEEZに線を引き、この海域の正式名称を「北ナトゥナ海」と表記した。近く国連などに改訂地図を提出し、国際機関に名称登録申請もするという。
この海域は豊かな漁場で、石油など豊富な海底資源でも知られる。だが、中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張する根拠とする「九段線」の南端と一部が重複。中国は、両国間に「領有権問題はない」とする一方、同海域を「中国の伝統的な漁場」と主張し、中国の漁船や公船が、インドネシア側の取締船との衝突を繰り返している。
同省高官は、フィリピンが全面勝訴した仲裁裁定で、南シナ海にEEZが発生する「島」は存在しないと裁定されたことを挙げ、ナトゥナ諸島沖のEEZが他国と競合しないと説明。裁定が「九段線」についても法的根拠を否定したとした。新地図は昨年10月から、インドネシア政府の21機関が参加し、策定を進めてきたという。
インドネシアのジョコ政権は、中国への配慮から仲裁裁定への直接的な論評を避ける一方、「法の支配」を強調。中国を含む違法外国漁船を取り締まり爆破する、厳格な対応をとってきた。また、ナトゥナ諸島で海軍基地拡充や戦闘機配置などを進め、中国を牽制(けんせい)している。
中国外務省の耿爽報道官は14日の記者会見で、インドネシアによる同海域の名称変更を「意味がない」と突き放した。南シナ海の一部海域の名称をめぐっては、中国と領有権で対立するフィリピンが「西フィリピン海」、ベトナムが「東海」など、それぞれ独自の呼称を使っている。