シャープのCEATECは「AIoT」、家電が勝手に進化する? - シュールなロボホンの展示も
マイナビニュース
プラスワン・クリエイティブ
15 時間前
28.10.04.
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●「AI」+「IoT」=「AIoT」(モノの人工知能化)
シャープは10月3日、翌日の4日から千葉県の幕張メッセで開催する「CEATEC JAPAN 2016」への出展内容について、記者説明会を実施した。同時に参考出品となる「ホームアシスタント(仮名)」も発表。こちらは5万円未満程度の価格帯と、2017年度前半の商品化を目指して開発中だ。CEATECプレスデイの同社ブースとともにレポートする。
○AIoTを、一台ずつの家電から住宅全体に広げる構想
シャープブースの今年のテーマは「AIoTを家電からスマートホームへ」となっている。シャープは昨年(2015年)のCEATEC会場で、「AI(人工知能)」と「IoT(モノのインターネット)」を掛け合わせた造語として「AIoT(モノの人工知能化)」を提唱した。「家電をクラウドに接続して人工知能化することで、家電をもっと人に寄り添う存在にする」という、目指すビジョンを一言で表した言葉ともいえる。
このビジョンをベースに、家電という単体のプロダクトをAIoT化するだけでなく、家中の家電はもとより、住設機器やサービスも含めてAIoTしていこうというのが、今年のテーマ「AIoTを家電からスマートホームへ」の主旨だ。
家電やサービスがクラウドを通じて学習することで、住人の生活スタイルに最適化され、使えば使うほどユーザーを理解し、我が家流に成長していく……。その最適化は、ボタン操作や面倒な設定を通じて行われるのではなく、ユーザーとAIの間で音声による自然な会話を通じて自動的に行われるというのだ。
やや堅苦しい言い回しになったが、平たくいうと、「家電がユーザーと会話しながら勝手に使いやすく進化していきますよ」ということ。
キッチンを例に取ると、ユーザーは冷蔵庫やオーブンレンジと献立の相談ができる。冷蔵庫内で賞味期限が近づいている食材を優先的に利用する献立を提案したり、不足している食材の買い物のオススメ、もしくは調達まで行う。さらに、今夜は実家から祖母が遊びに来るといった場合、祖母の家のキッチン家電と連携し、「おばあちゃんのお昼ごはんはお魚だったから、お肉の料理にしましょう」と提案するなど、一個の家を超越した観点から提案してくるようになる。
もっとも、シャープのプロダクトだけでは、カバーし切れない家電分野がいろいろ残る。ユーザーが今後、シャープ製品だけで家庭内の家電をそろえていくというのも、現実的とはいえないだろう。
このため、シャープは他社とのアライアンスによるソリューションも進めており、例えばドアホンや電気錠とのAIoT連携も進めているという。これは、家族の帰宅時にドアホンで表情や声をとらえて変化を察知したり、本人認証して電気錠を解放したり、家族の伝言を伝えたりといったことを実現するものだ。ほかにも各種の見張りセンサーや、HEMSなどともアライアンスしていきたいと意気込む。
●利用中の家電をAIoT化するホームアシスタント
○現在利用中の家電を擬似的にAIoT化するホームアシスタント
他社とのアライアンスの次にシャープが取り組むのが、ユーザーが現在利用している家電製品をAIoTの枠組みに組み込む施策だ。シャープの現行製品でさえ、まだまだIoT対応していないものが多く、それらは今後5年、10年と使われ続ける。そうした機器を通じて、ユーザーにAIoTへの理解を広げることで、対応製品の普及に弾みを付けようというわけだ。
テレビ、レコーダーはもちろん、エアコン、扇風機、空気清浄機、照明など、家庭内には赤外線リモコンで制御する家電製品が沢山ある。これらの家電や住設機器、サービスをユーザーと音声でつなごうというのが、今回発表した「ホームアシスタント」だ。
正式名称は未だなく、「ホームアシスタント」はカテゴリー名との認識。社内では「リンちゃん」のコードネームで呼ばれているという。ここでは便宜上「ホームアシスタント」で記事を続ける。
ホームアシスタントは、高さ130mm(突起物まで含めて138mm)の卵型デバイス。LEDで光る2つの目を持ち、ユーザーからの呼びかけに反応してグリーンやブルー、オレンジなどに光る。明らかに「目」をイメージしたデザインだが、カメラ機能は備えていない。ロボホンのように歩いたり手足を動かしたりはしないので、ロボットと呼ぶべきか悩ましいところだが、ユーザーと音声によるコミュニケーションが取れるという点では、コミュニケーションロボットの範疇に含めても良さそうだ。
Wi-FiでシャープのAIoTクラウドに接続し、AI機能はクラウド上で稼働する。このため、家庭内のWi-Fiがつながる場所に、ホームアシスタントを配置しておく必要がある。電源はACケーブルを利用する。会場ではデモンストレーション用にバッテリー駆動するモデルを用意していたが、家庭内で動かす必要性が低いため、実際の製品はバッテリーを搭載しない可能性も高いとのことだ。
ホームアシスタントは赤外線リモコンの機能を備え、ユーザーの生活に合わせて家電をコントロールする。例えば、帰宅したユーザーが「暑い」といえば、「お帰りなさい、エアコンを付けますか?」と確認し、いつもより強めに冷やすといった融通を利かせながらエアコンの電源を入れたりする。
また、ユーザーとの自然な対話から機器をコントロールする糸口をつかみ、快適な生活をサポートする。ユーザーが「お休み」と声をかけると、「明日は何時に起きますか?」と返事が来て「6時かな?」と応じると、「朝6時までに、部屋を暖めて(涼しくて)おきますね。お休みなさい」と答えて、タイマーをセットするといった具合だ。
家族からの伝言を預かったり、伝えたり、あるいは出掛けるユーザーに「雨の天気予報が出ているので傘をお持ちください」と伝えて気付きを与えたりもできる。この、ユーザーに気付かせる働きかけは、注目したいポイント。ホームアシスタントが直接操作できない内容についても、ユーザーに適切な操作(作業)を促せることを意味する。
例えば、「今日は午後から雨なので、洗濯物は天日干しではなく内干しするか、乾燥機を利用しましょう」と伝えれば、リモコンに対応しない洗濯機の適切な利用をサポートできることになる。
家電など、他の機器と連携するユーザーインタフェースという意味では、シャープには既にロボホンがある。その棲み分けが気になるところだが、ロボホンは個人が持ち歩くもので、ユーザーにITリテラシーも必要になる一方、ホームアシスタントは自宅に据え置きしてITリテラシーもほぼ不要という点が違う。家庭にWi-Fi環境が必要なので、ITリテラシーが皆無な一家でも導入できるとはいかないかもしれないが、誰か一人分かる人間がいれば大丈夫だろう。
ずいぶんと生活を便利にしてくれそうだが、もちろん課題もある。シャープが現在課題として検討しているのは「どう家電にするか」の部分だという。新しいカテゴリーの商品と呼ぶだけあって、確かに家電っぽくないともいえるし、購入したいと思ったユーザーが、家電量販店のどこの売り場に行けば取り扱っているのか、ここという正解がぱっと思い付かない。販売方法も売り切り型にするのか、ロボホンのような月額課金型にするのか、未だ検討中とのことだ。
●CEATEC会場のシャープブースを紹介
○未来の家では家電がユーザーに働きかけ、快適な生活を支援する
最後に、CEATEC会場のシャープブースについて、様子をお届けしよう。
メインコーナーは、ここまでお伝えしたホームアシスタントを含む、AIoTが実現した家庭はどのようになるのか、イメージを膨らませる「AIoTスマートホームゾーン」。未来感あるデザインのエアコンや空気清浄機、オーブンレンジなどが参考展示されている。
ホームアシスタントはエアコンとの連携をアピールしており、他の家電との連携についてはスタッフの説明に任せているカタチだ。
ロボホンコーナーでは、先日のアップデートで実装した2体のロボホン同士の掛け合いが見られる。ロボホンとロボホンが延々とあっち向いてホイを続けていて微妙にシュールだ。ロボホンは法人への導入提案も進めており、飲食店などの受付・接客、多国語による観光案内、見守りなどの事例を紹介していた。
IGZO / 8Kゾーンは、IGZO技術を応用した四角くないフリーフォームディスプレイ(FFD)や、超高精細ディスプレイの展示だ。85インチ8Kモニターを使ったCG女子高生「Saya」の動画や、NHKが試験放送中のスーパーハイビジョン番組の上映なども行う。
Be Originalゾーンは、シャープの100年を超える歴史の中で、エポックメイキングだった商品の展示。太陽電池電卓、液晶ビューカム、カメラ付き携帯電話、初代AQUOSなどが並ぶ。Be Originalはシャープのキャッチフレーズだった「目の付け所がシャープでしょ」のニュアンスを英文にしたもの。
全体的にワクワクさせてくれるソリューションが豊富で、見どころも用意されている印象だ。ただ、やや厳しい指摘をすると、AIoTがメインコンテンツでありながら、AIoTから外れたソリューションも並んでいるのは気になった。8K映像モニターやIGZOによるフリーフォームディスプレイなどは圧倒的な画質と見た目の斬新さで目を引くのだが、ここに展示しているものが、ホームアシスタントやロボホンから操作できれば、もっと一体感が演出できて楽しめるのではないかと感じた。