スピーチナンバーワンは、高橋樹里かな。
島崎遥香、岡田奈々なども大きく印象が変わった。
将来への期待への片鱗が、そこにあるかも知れない。
AKB48グループ選抜総選挙には魔物がいるのか。今年の結果を総括してみた
エキレビ
3 時間前
28.06.20.
今年もAKB48グループの選抜総選挙が終わった(結果はこちら)。先週土曜(6月18日)の新潟での開票イベントの結果はすでに周知のとおり、HKT48の指原莉乃が昨年に続いて1位を獲得、2009年に選抜総選挙が始まって以来初めての連覇を達成した。
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その指原が、1位に決まったあとのスピーチで強調していたのは、「1位として認めてほしい」ということだった。といっても認めてほしいのは自分自身というよりは、「1位にまで引き上げてくれたファンと自分との絆」だという。
「私はあっちゃん(前田敦子)や(大島)優子ちゃんや(渡辺)麻友ちゃんと違って企画物と呼ばれてもおかしくない、私でもそう思っています。だけどいままで1位をとってきたメンバー同様、ファンとの絆は熱いと思っています。なので、私の1位は当たり前じゃありません。私のファンが無理に無理を重ねて頑張ってくれた1位です」
ここでつけくわえておきたいのは、指原はこれまで選抜総選挙でしかAKB48のシングル曲のセンターポジションに選ばれたことがないという事実だ。対して、今回2位だった渡辺麻友がセンターになったのはこれまで3回、そのうち2回は総選挙の結果とは関係のない通常のシングルである。
そもそも選抜総選挙は、シングル曲を歌うメンバーの決定権がいつも運営側に握られていることへのファンの不満を受けて始められたものだ。そう考えると、指原ほど総選挙の本来の主旨に適応したキャラクターもいない。彼女自身、そのことに自覚的で、先に引用した言葉にもあるように、AKB48の本流は自分ではなく渡辺麻友たちだと認めている。
その渡辺は今回、速報で1位となりながらも先述のとおり最終的に2位に終わった。開票後のスピーチでは、1位との差を「あの壁はすごい高いな」「あれはもう誰も越えられないな」と表現してみせた。しかし彼女が実力や人気で指原に劣るというわけではけっしてない。それはたとえるなら、どんなトップアスリートでも、オリンピックではなかなかメダルに届かない選手はざらにいるというのと同じなのではないか。オリンピックと同様、選抜総選挙にもおそらくお祭り特有の魔力があるのだろう。
それにしても今回の渡辺のスピーチには凄みがあった。とくに「私は12歳でAKB48のオーディションに合格してこのグループに入りました。それからいま22歳で10年目に入ったのですが、すべてを犠牲にして、10代のほとんどをAKB48に捧げてきました」との発言からの「いまという一瞬を悔いのないように努力を惜しまず、日々歩んでいってほしいと思っています」という後輩に向けたメッセージには、ベテランとしての矜持を感じさせるに十分だった。
にゃんにゃん仮面の正体があきらかに!
成長ぶりを感じさせたスピーチは渡辺麻友だけではない。たとえば、今回が最後の選抜総選挙と公言して参加したひとりである島崎遥香(AKB48チームA。今回8位)のスピーチにもちょっと驚かされた。
「私は去年一年間、アイドルとしての活動をあまりしてこなかったので、立候補していいものか最後まで悩みました。でもそんなときにやめないでと言ってくれたのが、総監督の横山由依でした。ありがとう。でも、私は今年、自分にとって、何の根拠もないんですけど勝負の年だと思っていて、どれだけの人が自分を必要としてくれているのか、戦っていきたいなと思います」
握手会でのファン対応のしょっぱさから「塩対応」と呼ばれてきた島崎から、まさか「戦っていきたい」との言葉が出てくるとは。ついでに、昨年より48グループの総監督を務める横山由依(AKB48チームA。今回11位)が、その役割をきちんと果たしていることもうかがえる良いスピーチだった。
一方、最後の総選挙だからと、「にゃんにゃん仮面」なるキャラクターに扮して今回出馬したのは小嶋陽菜(AKB48チームA)だ。当初より一体誰なのかとさまざまな憶測が飛び交ったにゃんにゃん仮面だが、まさかこじはるだったとは。私、まったくわかりませんでしたわ(棒)。
順位発表時には、ワンワン警察(その正体はOGの大島優子)がにゃんにゃん仮面を逮捕にやって来るという演出がなされ、捕まる前にファンにあいさつをさせてほしいということで、ついにマスクを外し正体を明かした。このとき、「今朝、スポーツ紙などで報道がありましたが……みなさん、『えー!』って言う準備できてますか?」と前置きしつつ、卒業発表を行なったことはすでにご承知のとおり。
「私、小嶋陽菜はAKB48をやっと卒業します!(笑)」
(観客)えー!
「声が小さい。卒業します! 発表はしましたが、時期などは決まってません。たかみな(高橋みなみ)みたいに、ああいうふうに(発表から卒業するまで時期が伸び伸びに)ならないように。みなさん、もっともっとAKB48を楽しんでください」
どこまでもにゃんにゃん流を押し通した卒業発表であった。
さまざまなものを背負っての総選挙参加
今年ほど、メンバーがそれぞれ色々なものを背負って活動を続けているということを痛感した総選挙もない。たとえば、34位の倉野尾成美(AKB48チーム8)と45位の田中美久(HKT48チームH)はいずれも今年4月に大地震に見舞われた熊本出身とあって、スピーチのなかで「熊本のためにも頑張りたい」と語った。
入山杏奈(AKB48チームA)は2年ぶりの総選挙参加となった。一昨年は握手会襲撃事件で負傷した影響から開票イベントは欠席(結果は20位)、昨年は参加を見送っていた。今回は18位と自己最高位に入り、「応援してくださる方がいて、『待ってるよ』と支えてくださる方がいて、いまこうして私の言葉に耳を傾けてくださる方がこんなにたくさんいて、本当にうれしいです」と喜びを噛みしめた。
今回44位で初めてランクインした須藤凛々花(NMB48チームN)は、「本当はここで卒業発表しようと思ってたんです」と寝耳に水の言葉で切り出すと、母親が病気になったことを打ち明けた。ここから「(活動拠点の大阪から)東京の実家に帰ろうかなと思ってたんですけど、新しい家族を見つけたので、自分の夢をかなえるまでは東京に帰らないと決めた」と、グループの仲間やファンに向けて決意表明。このあと、司会の徳光和夫からうながされ、自分のいちばんのファンだという母親に向けて「ありがとう、生んでくれて!」とメッセージを送った。
岡田奈々(AKB48チーム4)は本人が体調不良のため、今回は投票開始直前より2週間ほど休養に入っていた。しかし開票イベントには出席し、14位でみごと初の選抜(上位16人)入りを果たしている。そのスピーチでは、休養の理由として「私は機能性低血糖症と診断されました。そこから摂食障害、過食、嘔吐を引き起こしました。なかなか言えなくてごめんなさい」と告白した。本人のなかでは「これを言ったら嫌われちゃうんじゃないか」などと葛藤もあったらしい。しかし、目標としていた選抜まで押し上げてくれたファンを信じて、本当のことを言わなければと思い、告白することを決意したという。その勇気に心を打たれるスピーチだった。
真面目な性格とファンのあいだでも認識されている岡田だけに、きっと無理をしてしまうことも多々あったはずだ。入山や須藤にしてもそうだが、それぞれの事情に応じて常にフォローしていけるよう、運営側のバックアップが求められるのはもちろん、ファンのほうも何ができるか考えずにはいられない。
AKB48グループの明日はどっちだ!?
今回の総選挙では80位までが発表され、その4分の1にあたる20人が自己初めてのランクインとなった。昨年結成されたNGT48からは、生え抜きのメンバーとして加藤美南(チームNIII)が76位で唯一のランクイン。ステージ上では、テーピングしている足でバク転を披露した。
25位に入ったNMB48の沖田彩華(チームM)は、劇場公演を休んだメンバーの代役(アンダー)を頻繁に担い、「劇場職人」の異名をとるその活躍ぶりが、今年初めに公開された映画「道頓堀よ、泣かせてくれ! DOCUMENTARY of NMB48」でフィーチャーされた。それが今回初のランクインへとつながったことは間違いない。
速報でいきなり9位に入ったSKE48の竹内彩姫(チームKII)は、最終的に31位で初のランクインを果たした。竹内と同じチームから30位に入った惣田紗莉渚は、14歳のとき以来AKB48のオーディションを3度受け、高校生のときには宝塚をやはり3回受験したが落ち続け、SKE48に入ったときには20歳になっていたという苦労人。
彼女たちばかりでなく、どのメンバーもおのおのドラマを抱えている。61位に入った西野未姫(AKB48チーム4)のようにランクインは初めてではないものの、昨年は圏外となりながら今回返り咲いたメンバーもいる。西野はダンスの懸命さなどから注目される若手メンバーのひとりだ。
今回の選抜メンバーに目を向ければ、前出の14位の岡田奈々(AKB48チーム4)のほか、9位の兒玉遥(HKT48チームH・AKB48チームK兼任)、13位の向井地美音(AKB48チームK)、15位の高橋朱里(AKB48チーム4)が初の選抜入りとなった。向井地は今回の投票曲である「翼はいらない」でセンターを務め、高橋は昨年よりチームのキャプテンを務めるという具合に、いずれも次世代として期待されるメンバーである。
AKB48は昨年末に結成から10周年を迎え、今年4月にはグループ総監督の高橋みなみが卒業したのを機に「第一章」を終え、今回の選抜総選挙は「第二章」に入って初めての総選挙という位置づけであった。メンバーのあいだでは危機感も漂う。そのなかにあって松井珠理奈(今回3位。SKE48チームS)の「あと5年は卒業しません」宣言は希望を感じさせたし、また高橋朱里の次のスピーチは将来に向けての公約と受けとれた。
「AKB48が第一章で完結してしまったらくやしすぎます。いまAKB48を応援してくれているみなさんや、力を貸してくれているスタッフのみなさんが、まだこれからも力を貸してくれるように、一メンバーとして、チーム4のキャプテンとして頑張りたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします」
(近藤正高)