新国立:「責任、デザイン選定まで」安藤氏コスト議論せず
毎日新聞
27.07.15.
4 時間前
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「選んだ責任は感じるが、とりまとめはここまで。私は総理大臣ではない」。新国立競技場の基本デザインを選ぶ審査委員会で委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏(73)が16日、東京都内で記者会見した。政府が計画見直しの検討を始める中、安藤氏はキールアーチと呼ばれる巨大な2本の弓状構造物が特徴のデザイン維持を求めつつ、批判が高まる総工費については自らの責任でないと強調した。
会見場の東京都千代田区のホテルには、200人を超える報道陣が詰めかけた。午前11時15分、安藤氏はグレーのジャケット姿で現れた。用意されたパネルを示しながら、2012年11月のデザイン選定以降は、調整に関わっていないと何度も述べた。総工費が2520億円に膨らんだことについて「もうからなくても国のためだ。それが日本のゼネコンのプライドではないか」と、建設会社との金額調整を求めた。
デザインが審査条件の1300億円で建設可能か検討したかについては「アイデアのコンペで、徹底的なコストの議論にはなっていない」と語った。今月7日の日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議を欠席したことに関し「欠席しただけで全て私の責任と言われるのは分からない」と話した。
イラク出身で英国在住の建築家、ザハ・ハディド氏の作品が選ばれた経緯をたどると、審査の過程で安藤氏が強く推していた様子が浮かび上がる。
「日本の技術力のチャレンジという精神から17番がいいと思います」。12年11月7日。JSCが基本構想のデザインを募った国際コンクールの審査委員会で安藤氏は発言した。委員の一人であるJSCの河野一郎理事長が「いかがでしょうか」と尋ねると「賛成」の声が上がった。17番はハディド氏の作品だ。
情報公開請求で開示された議事録によると、2次審査に残った11点のうち、委員長を含む委員10人による投票では、ハディド氏の作品を含む3点が同点。だが、他の委員から「委員長の1票は2票か3票の重みがあると判断すべきかと思う」などと促され、安藤氏がハディド氏の作品を選んだ。審査委員会も、募集要項などを了承したJSCの国立競技場将来構想有識者会議も原則、非公開だった。
安藤氏はハディド氏の提案を「宇宙から舞い降りたような斬新な案に心を動かされた」と講評していた。【山本浩資、飯山太郎、武本光政】