「円座石」のコケ 何者かに丸剥ぎにされる? 和歌山・熊野古道「大雲取越」
産経新聞
27.05.04.
6 時間前
「円座石」のコケ 何者かに丸剥ぎにされる? 和歌山・熊野古道「大雲取越」: コケが失われて岩肌が露出している円座石。上部の3つの円には仏の梵字が記されている=4月29日、和歌山県新宮市熊野川町© 産経新聞 提供 コケが失われて岩肌が露出している円座石。上部の3つの円には仏の梵字が記されている=4月29日、和歌山県新宮市熊野川町
世界遺産「熊野古道」の難所として知られる「大雲取越)」の道沿いに鎮座する和歌山県新宮市熊野川町の名所「円座(わろうだ)石」で、前面を覆っていたコケがほぼなくなっていることが3日、わかった。全体が不自然に剥げ落ちていることから、人為的にはぎ取られた可能性が高い。採取に罰則などはない区域だが、地元からは「元に戻るのに5年以上かかるのでは」と、困惑する声が出ている。
大雲取越は、熊野那智大社(同県那智勝浦町)から北へ延びる14・5キロの熊野古道の一部。円座石は幅約5メートル、高さ約2・5メートルで、表面には熊野本宮大社(同県田辺市)の阿弥陀仏、熊野速玉大社(新宮市)の薬師仏、熊野那智大社の観音仏を示す梵字(ぼんじ)が刻まれている。「わろうだ」とは、わらやいぐさなどを丸く編んだ敷物のことをいい、3つの仏が石の上で談笑したと伝えられている。
市教委によると、コケがなくなっていたのは表面の高さ約2メートル、幅約4メートル。昨年12月初めに地元住民が見つけた。市教委が調査したところ、11月末にはコケはあったという。
刃物で削り取ったような痕は確認されていないが、全体が自然に剥げ落ちることは考えにくく、人為的に剥ぎ取った可能性が高い。市教委も「人為的なら残念」としている。
円座石は熊野古道沿いにあるが、世界遺産のコアゾーンではなくバッファゾーン(緩衝地帯)で、文化財には指定されていない。コケを採っても罰則はないというが、地元では困惑が広がっている。
地元で植物の保護などに取り組む熊野自然保護連絡協議会の瀧野秀二副会長は「コケは特に珍しい種類ではないが、元の状態に戻るには5年以上はかかるのではないか」と話している。