宙に浮く岸田外相訪露 首相は“強行”模索も
2014.4.15 23:30 [外交]
混迷するウクライナ情勢を受け、今月下旬に予定された岸田文雄外相のロシア訪問が宙に浮いたままになっている。安倍晋三政権は、対露批判を強める先進7カ国(G7)の結束を崩せない半面、北方領土交渉の加速化や対中国牽(けん)制(せい)などの狙いから日露間の「対話」も先送りしたくないからだ。
岸田氏の訪露について、外務省幹部は「中止になっていないが、決まってもいない」との立場を貫いている。要はこの期に及んで結論を出せない状況なのだ。
岸田氏はモスクワで4月28、29両日に予定されていた主要8カ国(G8)外相会談に参加するために訪露し、ラブロフ外相と個別に会談する予定だった。だがG7が3月24日の緊急首脳会議でロシアの“締め出し”を決めたことで、G8外相会談は白紙に戻された。
ロシアのクリミア併合後、米英仏などの外相はラブロフ氏と会談しているが、いずれも舞台は第三国だった。日本の外相がG7の総意としてロシアに直接抗議し自制を求める大義はあるが、悩ましいのは岸田氏の場合、“敵地”に乗り込む形となり、G7の足並みを乱しかねないことだ。
しかし在任中の領土問題解決を掲げ、対露外交を重視してきた安倍首相としては「外相の訪露の機会をみすみす逃したくないのが本音」(周辺)でもある。岸田氏の訪露を中止にすると、ロシア側に今秋予定されているプーチン大統領の来日を棚上げさせる口実を与えかねないとの懸念もぬぐえないからだ。
また、プーチン氏は5月に訪中を予定しており、その前に岸田氏が訪露し、中露の接近にくさびを打つ戦略もある。
岸田氏は11日の記者会見で「(訪露は)ウクライナ情勢、G7各国の動きなどを総合的に踏まえ、最終的に判断をしたい」と語ったが、首相が決断を下すタイムリミットは迫っている。
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