読むのが長すぎるという方は3.【2020年の世界と日本】のみお読みください。
【2020年の世界と日本】
櫻井よしこ氏に聞く(下)「日本ってすごくいい国。庶民を大御宝とずっと呼んできたんです」
2014.1.2 12:00 (1/9ページ)[歴史・考古学]
櫻井よしこ氏
--2020年も中国は今のペースで経済成長を続けている可能性はあります。対する日本は爆発的に経済成長するのは難しい。海外にODA(政府開発援助)を出すような余力がますますなくなっていて中国との差がつく中で、軍事力を持たない日本はどうやって存在感を示していけばいいと思われますか
「中国の経済は正直いってどうなるかよく分からないところがありますよね。中国経済は名目的にはどんどん成長しているように見えるけれども、経済成長を続けようと思えば体制を変えて、もっと開いていかなければならない。
中国共産党もそのことは頭ではわかっている。たとえば王岐山は今の中国共産党ではもう国民がついてこないということをよく知っている人です。だから2012年の12月に全共産党員8200万人に対してフランスの思想家のトクヴィルの『旧体制と革命』という本を読めと指示をした。
『全共産党員は必読せよ』ということで、私も急いで読んでみました。ああ、なるほど、王氏はこれを言いたかったのかなと思ったのは、その中にフランスの貴族とイギリスの貴族を比較した章があるんです」
「フランスの貴族は特権階級として留まって国民に開くことなく、『われわれは特権階級である。税金も払わなくてもよい』というふうにぜいたくざんまいをする。『われわれは特権階級だ』という姿勢で義務も果たすことなく国民からどんどん離れていった。
フランスの貴族が軍の大将になったとしても兵隊たちは誰一人尊敬していない。形の上では部下だけれど、だれもこの人のために戦おうとは思わないというので『兵なきリーダー』になるんだと書かれています。だから革命が起きてみんなギロチン台に送られたんだと、書いてあるんですね」
櫻井よしこ氏に聞く(下)「日本ってすごくいい国。庶民を大御宝とずっと呼んできたんです」
2014.1.2 12:00 (2/9ページ)[歴史・考古学]
櫻井よしこ氏
「ところがイギリスの貴族はノブレス・オブリージュといって、率先して税を払い、戦いがあれば兵よりも前にまず貴族が戦ってみせる。危機に際して自分の命を投げ出して国を守るという気概をみせた。だから広大な領地を持っていても何をしていても国民から信頼されていまだにイギリス貴族というのは健在である、ということを書いてあるんですね。
私はそれを読んで、なるほど中国共産党は『赤い貴族』といわれるように特権階級で、人民のことなど何も思っていない。だからフランスのように草の根の国民レベルからの『血の革命』に襲われるのではないかという恐れを抱いているのではないかと。
王岐山が『トクヴィルの本を読め』といったのはそのことをみんなが自覚して、自らをまず正せということだと思うのです。でも全くなんの効果もない。一方で軍の力が強まっている」
「今回の『嫦娥』の人工衛星プログラムも全部、人民解放軍がやっているんですよね。ふつうは科学省、文部省、或いは通産省など、そういったところです。でも中国では全部軍がやっていますよね。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関することもほとんど軍がやっている、防空識別圏も同じ。習近平氏はこうした軍の動きを押えるのではなく、追認し続けている。ということは、ものすごい強硬路線に走る可能性があるということです。
強硬路線に習近平氏自身が走っているのか、軍に引っ張られているのか、どっちがリードを取っているのか分からないけれども、とにかくそっち方向にいっていることは確かです。そのような中で、中国の経済が本当にうまくいくんですかねという疑問はあるわけです」
櫻井よしこ氏に聞く(下)「日本ってすごくいい国。庶民を大御宝とずっと呼んできたんです」
2014.1.2 12:00 (3/9ページ)[歴史・考古学]
櫻井よしこ氏
--2020年時点で、中国が今のような経済成長を続けていられるかは疑問だということですね
「疑わしいと思いますね。それはね、いろんな制度を改めて本当に経済原理を反映させるような自由さを取り入れるのならいいと思う。王岐山氏らがそれをやろうとした。李克強首相も同じです。
でも、王氏の改革から一年がすぎたいま、効果は全く出ていない。逆に経済面でも強硬路線というか、党中心ということになっていくとしたらこれまでのような経済成長は到底達成できない。
私は経済の専門家ではないのであまり言えないのですが、中国の経済が2020年になっても今のような勢いを保っているという見方は私は疑っています。それはないだろうと思ってますよね」
--そうなると、中国はより軍事に偏った国になっている可能性もありますね
「ですから、本当に日米同盟という絆を確立して、日本が自国の領土・領海は断固として守るというふうに気概を示さなければ、中国に手を出させる隙間を与えます。
それをさせないようにしっかりとこっちが守り続ける態勢を取っていれば、中国は用心して手を出さないと思います。こっちがどれだけしっかりするかということと、向こうがどれだけ慎重になるかということは正比例ですよ」
--2020年の中国はカネによる外交より軍事で押していく形でアジアで存在感を出しているということでしょうか
「この5~6年でそんなに急激に中国の経済が傾くとは思いませんけれども、アメリカの力もそんなに急激に傾くとは思いません。けれども、確実にそっち方向にいっているだろうと思いますね。
アメリカがもっと内向きになり、中国がもっと膨張してきて日本がしっかりしなければ日本は中国の脅威のもとに屈服するようになっているかもしれないわけですから、それを断固としてさせないために今が日本にとっては踏ん張りどころということですよね」
櫻井よしこ氏に聞く(下)「日本ってすごくいい国。庶民を大御宝とずっと呼んできたんです」
2014.1.2 12:00 (4/9ページ)[歴史・考古学]
櫻井よしこ氏
--日韓関係はどうなっていると思われますか
「北朝鮮が今までの父親や祖父らとのやり方とは全く違う感じで、あからさまに世界の前で自分自身の怒りを表明して叔父を殺害してしまったわけです。これは何を意味しているかというと未熟さを意味している以外の何者でもないわけです。
経済はもうあんな経済でよく暮らしているなと思うような状況なわけでしょ。だから北朝鮮有事は間近だと思いますよね。そうしたときに韓国がどうするか。韓国は本当はアメリカと日本に協力を求めて、韓国による自由統一を成し遂げて中国の影響力をできるだけ排除しなきゃいけないと思いますが、その逆になっています。
半島国家というのはどこの国をみても半島が地続きの大陸の顔色をみざるを得ないんです。それは地政学上から生まれる宿命でもあろうかというふうに思いますね」
「そう思って日本と朝鮮半島の歴史を振り返ってみると、過去1000年間、あまり良い時期はなかったのです。日韓関係が多少どうにかなるかなという感じだったのは本当に1965年の日韓基本条約を結んで日本からのおカネがいって70~80年代くらいまで。わずか数十年です。そのほかはいつもいつもぎくしゃくしていて、日本と韓国の歯車がかみ合っていない」
「日本人は日本人で一生懸命韓国のために努力したという気持ちがどこかにある。韓国にしてみれば『とんでもない。日本人は自分たちから文明を学んだ野蛮な民族であるにもかかわらず、偉そうな顔をしている』というような心理的な壁が向こう側にある。そういう考えの人たちに何をして差し上げても、通じにくいと思います。それが日韓間の今の関係だと思うんです」
櫻井よしこ氏に聞く(下)「日本ってすごくいい国。庶民を大御宝とずっと呼んできたんです」
2014.1.2 12:00 (5/9ページ)[歴史・考古学]
櫻井よしこ氏
「そう思えば、韓国、朝鮮半島の反日や歴史の捏造(ねつぞう)についてはそのつどきちんと反論することが如何に大事か見えてきます。日本の国益のためには朝鮮半島が中国の支配を受ける反日親中的な国であるよりは自由や民主主義、法の支配を基盤とする国家として、日本に対する受容性を高めてくれることが望ましい。
中国のような一党支配の価値観は受け入れられないとして中国と距離を置く国になってくれれば、望外の恩恵だと考えて、韓国人から好かれようというところまでは期待しない方がよいと思います。期待はしないが国益のために韓国を少しばかりこちら側の陣営に引き入れることが出来れば十分だというくらいの心づもりでいればよいと思います」
「日韓関係は期待をしないでしかし受け入れ可能なほどのよさを保つことを目指せばいいと思います。お互いの意見を一致させるなど、ゆめゆめ思わないで、お互いの国益のためにおおもとの所の政策を一致させることができていればそれで合格点だと思う。ただその意味では、韓国がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に入ると言い始めたでしょ。
あれはすごく大きいことだと思うんですよ。今までFTA(自由貿易協定)でやろう、しかも日中韓のFTAでは日本とはやりたくないから中国とやるみたいなことでしたけど。TPPに入ることを検討し始めたということは今私が言ったおおもとの所では合意をしようというところに彼らが入ってきたのかなあとも思いますね」