【科学】
小惑星1999JU3 地球の有機物の由来 粒子分析し謎を解明
2014.1.13 14:00
はやぶさ2が向かう小惑星1999JU3は、火星と木星の間にある小惑星帯が故郷。太陽から遠く低温の環境のため、太陽系誕生時の物質がそのままの状態で残っている。いわば太陽系のタイムカプセルだ。
初代はやぶさが探査した「イトカワ」と違って、有機物や水を豊富に含む「C型小惑星」に分類される。木星などの重力を受けて地球付近に移動してきたとみられ、格好のターゲットとなった。直径は約920メートルで、サトイモのような形状らしい。
小惑星や隕石(いんせき)は四十数億年前の原始地球に頻繁に衝突し、生命の材料となるアミノ酸などを地球に運び込んだと考えられているが、まだよく分かっていない。
鍵を握るのは分子の構造だ。アミノ酸は構成する原子の種類が同じでも、右手と左手のように重ね合わせることができない「鏡像異性体」が存在する。生物のアミノ酸はすべて左手型の構造を持っている。
隕石に含まれるアミノ酸も左手型が多いが、地球衝突時の高温で変質している。これに対し小惑星は元の状態を保っている利点があり、はやぶさ2が採取したアミノ酸に左手型が多ければ、生命の材料は宇宙から運ばれた可能性が高くなる。組成や同位体比などを詳しく調べれば、生命誕生のプロセスを解明する手掛かりも得られそうだ。
研究に参加する名古屋大の渡辺誠一郎教授(惑星形成論)は「地球の有機物のどの程度が宇宙に由来し、どのように生命の材料となったのか理解が進むだろう」と話す。
また、地球の海を満たす水も一部は宇宙から運ばれたとみられ、採取した水と地球の水の同位体比が一致すれば状況証拠になる。
一方、採取した物質に含まれる放射性元素の年代を測定すれば、小惑星同士の衝突の時期などを特定でき、太陽系形成史の解明につながる。京都大の土山明教授(鉱物学)は「未知の物質が見つかれば、太陽系の歴史を理解する上で新たな手掛かりになる」と期待している。
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