【目覚めよ日本力】
世界に誇る技術 「神の粒子」発見の陰に日本企業
2013.5.23 10:08 (1/2ページ)[先端技術]
新粒子の発見に貢献 LHCに使われた日本の技術
“神の粒子”と呼ばれ、すべての物質に質量を与える未知の素粒子「ヒッグス粒子」。欧州合同原子核研究所(CERN)が昨年7月、ヒッグス粒子とみられる新粒子を発見したが、その観測では日本企業の先端技術が大きな役割を果たした。日本企業が長年にわたって培ってきた技術が、物質や宇宙の成り立ちに迫る研究でも花開いた。
新粒子を見つけたのは、スイス・ジュネーブ郊外の地下に設置された世界最大の加速器「大型ハドロン衝突型加速器」(LHC)。陽子をほぼ光速の速さまで加速、衝突させて出現する素粒子を捉える。
「日本の技術がなければLHCはできなかった」。プロジェクト責任者がこう漏らしたとされるほど、建設に日本メーカーの技術は不可欠だった。
LHCの心臓部で、陽子をコントロールするために強い磁力を生み出す超電導磁石には古河電気工業の超電導線材が使われた。LHCは国際的なプロジェクトであるため、同じ部材でも多くの国の企業が納入するケースが多い。だが超電導線材は製造が難しく、品質基準を満たせないメーカーが続出。結果的に古河電工が半分近くを請け負った。
目覚めよ日本力】
世界に誇る技術 「神の粒子」発見の陰に日本企業
2013.5.23 10:08 (2/2ページ)[先端技術]
新粒子の発見に貢献 LHCに使われた日本の技術
IHIは超電導磁石を極低温まで冷やす冷却装置を納入した。超電導状態になる極低温にするため、ヘリウムを減圧するもので、エネルギー・プラントセクターの本田忠明・品質管理部部長は「官民共同の研究開発から生まれた日本ならではの技術」と胸を張る。
原子よりもはるかに小さい粒子を観測する検出器で中心的な役割を担ったのが浜松ホトニクス。光を検出する光電子増倍管の世界シェアは9割超。粒子の飛跡を検出したり、粒子のエネルギーを測定するセンサーを供給し、CERNから特別表彰も受けた。
ほかにも東芝が粒子を分析する磁場をつくる超電導磁石を供給するなど、多くの日本企業が製品を提供。新粒子発見という画期的な成果は改めて日本企業の技術力を証明した。(田村龍彦)