「せめて卒業式だけは」 気仙沼の小学校、教員ら校舎を掃除
2011年3月17日 15時00分
卒業式の準備で、校内の泥を掃き出す鹿折小学校の小野寺徳茂校長=宮城県気仙沼市で
東日本大震災で、壊滅的な被害を受けた宮城県気仙沼市の小学校で、卒業式の準備が進められている。多くの児童や教員が津波で家を失ったが「卒業生はしっかり送り出したい」という思いで、被災した住民と力を合わせ、泥だらけの校舎の掃除を始めた。
市立鹿折(ししおり)小。雪が降る真冬並みの寒さの中、小野寺徳茂校長(59)ら教員15人と住民25人が集まり、散乱した机やいすを片付け、教室や廊下にたまった大量の泥を雪かき用のスコップで外に出していた。津波に襲われた同小の校舎や体育館は1メートル40センチ浸水した。
眼下の学校、子どもたちや自分たち教員の家がみるみる津波にのまれる様子を見ているしかなかった小野寺校長は「がくぜんとし、卒業式どころではないと思った」と振り返る。
全校児童356人のうち、すでに帰宅していた児童には、いまだ安否が分からない子どもたちもいる。卒業する69人の中でも、1人は亡くなっている。
それでも今は「残された卒業生を元気づけてあげたい」という思いが強い。19日の予定だった卒業式は24日に開くことに決めた。17日には教員が避難所を手分けして回り、児童に知らせる。
渡されるはずの卒業証書はとても用意できない。式では、小野寺校長が一人ひとりに口頭で卒業を告げるしかできない。もちろん、亡くなった児童の名前も読み上げる。
「『悔しさをバネに夢を実現してください』と伝えたい」。小野寺校長は懸命にスコップを動かし続けた。
(中日新聞)