【外信コラム】ロンドンの甃 世界的就職氷河期
2010.4.6 03:40
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未曾有の金融・経済危機の後遺症で日本では大学生の就職内定率が8割にとどまるなど就職氷河期が伝えられるが、国際金融都市ロンドンを擁する英国の就職戦線も同じように厳しい。
昨年末にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の大学院を修了したばかりの日本人女性、M子さん(24)が「無給でいいので仕事を体験させてもらえませんか」と支局に飛び込んできた。英国では職業体験を積んで就職に備えるのが慣例になっているからだ。
英国の解散・総選挙が近づき、猫の手も借りたい状況なので、わずかな最低賃金を支払って週3日程度手伝ってもらうことにした。英語とフランス語は堪能、ポルトガル語、スペイン語も日常会話ならOKという才媛なので、大助かりだ。
記者も26年前、大学院に進んで政治思想の研究を続けたかったが、母が脳卒中で倒れ、父に学費の援助を頼めなかったので、教授の勧めで産経新聞の門をたたいた。だから海外の一流大学院に留学できたM子さんがうらやましく見えるのだが、M子さんにとっては仕事が選べるほどあった当時が贅沢に思えるらしい。
LSEの学長を務めるハワード・デーヴィス・イングランド銀行(英中央銀行)元副総裁は卒業予定者全員に「今年の就職は大変だから健闘を祈る」と激励の電子メールを送ったそうだ。世界中で就職活動中のM子さんの仲間で採用が決まった学生はまだ1人もいない。(木村正人)