2010年04月01日(木) 山梨日日新聞
赤色LEDでブドウ粒大きく
県理工学研が装置開発
真夜中に点灯夏の日照演出
ブドウの実を大きくする赤色LEDを使った装置=山梨・県果樹試験場
山梨県総合理工学研究機構は、春季にハウス栽培するブドウの粒を大きくするため、発光ダイオード(LED)を使った装置を開発した。真夜中に3時間照射することで、ブドウは成長期である夏場と錯覚し、実が大きくなる仕組み。消費電力の少ないLEDを活用し、少ない費用で収益アップを目指す。
同機構が県果樹試験場、県工業技術センターと共同で開発した。同機構によると、ハウス栽培の巨峰やピオーネは4月末から出荷されるが、春季は日照時間が安定せず、粒の大きさにばらつきが出るケースもあった。
品質の向上と安定化を図り、農家の収益アップにつなげようと、同機構が2007年度から改善策を研究してきた。
同機構は真夜中に人工の「昼」をつくり出すことで、木が日の長い夏場と勘違いする性質を利用。花の満開期から実の着色期に当たる2~3月に光を葉に当てた結果、照射しない木よりも実が2~3割大きくなることが分かった。
蛍光灯でも同じ効果が得られるが、蛍光灯1本の消費電力量が40ワットなのに対し、同等の効果を得るためにLED100個を使用した場合でも消費電力量は8~9ワットにとどまり、電気料金は蛍光灯の20%程度に抑えられるという。
実験で最も実が大きくなることが分かった赤色のLEDで装置を開発。長さ約5メートルの発泡スチロール製板に5センチ間隔で取り付け、葉から30~50センチ離してつり下げる。
現在は実用化に向け、実証実験を山梨市の同試験場ほ場で行っており、午後11時から翌日午前2時までの3時間、照射している。さらに省エネ化を図るため、15秒間隔で点滅する状態でも効果が得られるか調べている。
装置や、効率的に葉に光を当てることができる設置方法について、同機構は特許を出願中。同試験場の斎籐典義研究員は「研究の成果を多くの農家に知ってもらい、実用化につなげたい」と話している。