【主張】子ども手当 財政規模を考え現実的に
2010.3.14 03:29
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鳩山政権の目玉政策である「子ども手当」と「高校授業料無償化」の両法案が、衆院の委員会で可決され、年度内成立の見通しとなった。
子ども手当は、来年度は中学卒業まで1人月1万3千円を支給する。高校授業料の無償化は、世帯の年収に応じて生徒1人あたり年約12万~24万円を高校側に一括支給する。
日本は世界で最も少子高齢化が進んでいる国とされる。このままでは、国家の基盤が揺らぎかねない。「社会全体で子育てを支援することが必要」という政策の基本理念は間違ってはいない。
だが、法案の内容には問題が少なくない。まずは財源不足だ。子ども手当は半額支給の来年度だけで約2兆3千億円、高校無償化には約4千億円の巨額の費用を必要とする。民主党は「予算の無駄の排除などで財源を捻出(ねんしゅつ)する」と大見えを切っていたが、来年度予算では達成できなかった。
国の税収も落ち込み、再来年度以降の「満額支給」にも見通しが立たないことを加味すれば、支給額引き下げや所得制限を講じるべきだ。そもそも「本当に子育てのために使われるのか」「将来世代へのツケ回し」といったバラマキ政策の印象はぬぐえない。
子ども手当は母国に子供を残してきた外国人には支給されるが、日本人でも海外に居住する場合は支給されないことも疑問だ。高校無償化も海外在住の日本人は対象外だ。こうした制度は日本人の出生数減少に歯止めをかけるという本来の目的にはそぐわない。
外国人の場合、自治体が相手国の証明書類などを厳格にチェックすることは可能なのか。野党からは「支給額が大きく、虚偽受給が横行するのでは」といった懸念も出ている。
公明党との修正協議で検討条項が法案の付則に盛り込まれたが、児童養護施設などに入所する一部の子供は支給対象外のままだ。これらは鳩山政権が「少子化対策」から「福祉施策」、さらには「景気対策」へと、その場しのぎの説明を繰り返し、制度の基本設計を怠ったツケといえる。
少子化対策は、経済的支援だけでは不十分だ。若者世代の雇用を安定化させることや、保育サービスの拡充など総合的な取り組みが不可欠である。鳩山由紀夫首相は法案の意図を改めて明確にし、国家財政の身の丈にあった現実的施策に転じる必要がある。