北朝鮮デノミで米研究者「インフレ対策でなく独裁強化が目的」
2009.12.14 18:05
【ワシントン=古森義久】北朝鮮経済を専門に調査している米国のピーターソン国際研究所のマーカス・ノーランド研究員は北朝鮮当局が11月末に断行した通貨のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)について“市場経済”の発展を抑え、政府の独裁を強化するための過酷な措置とする見解を発表した。
ノーランド研究員はこのほど発表した「金正日の偽の通貨改革」と題する論文で、このデノミの目的の基本は「中央政府による、国家から離れようとする企業家階級と(事実上の)市場経済を抑えること」にあると述べた。
同論文は通貨単位を切り替えるデノミ自体は近年、トルコやガーナでの実例のように、超インフレを抑えるマクロ経済措置として決して不当ではないとしながらも、北朝鮮の場合、まず新旧通貨の交換の最高額が限定されていた点でトルコやガーナのそれとは基本的に異なる、と論じた。
同論文によると、北朝鮮当局は最近の“市場経済”の拡大と一部国民の富の拡大が国家権力の弱体化につながることを恐れ、国民の財を一気に押収する効果を持つ「交換総額制限のデノミ」に踏み切った。その背後には今年の穀物が不作だったため、国産穀物の多くが政府調達を逃れて、闇市に流れ、裏の市場経済を大きくしていることへの対策もあるという。
同論文はさらに北朝鮮当局が最近、「食堂、ホテル、商店の違法な開店を含む違法な商業活動」に対し死刑をも含む懲罰を科していることを指摘し、大多数の「容疑者」たちは正規の司法手続きなしに極刑に処されていることを「脱北者たちの証言」などからとして紹介した。
同論文は今回の「デノミ」もそうした背景下での当局による国民に対する収奪と弾圧の措置だと総括し、その結果、当局者による弾圧見逃しへのワイロという動きで汚職が急速に広がることをも指摘した。
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