【主張】追加金融緩和 二番底回避は政府の責任
2009.12.2 02:57
このニュースのトピックス:労働・雇用
日銀は臨時の政策決定会合を開き、金融市場に潤沢な資金を供給する新金融緩和措置を決めた。急激な円高と株安が企業心理などを通じて実体経済に悪影響を及ぼす懸念があると判断した。
これまでの日銀の対応には批判もあったが、機動的な措置と受け止めたい。次は政府が行動する番だ。鳩山由紀夫首相は閣議で2次補正予算に盛り込む経済対策の基本方針を決めたが、その効果は未知数だ。「二番底」に落ち込むのを避けるために、日銀の対応と相乗効果を発揮できる具体的政策を打ち出してほしい。
今回の緩和措置は国債や社債、コマーシャルペーパー(CP)など幅広い証券を担保に、金融機関に対して0・1%の固定金利で3カ月間貸し出す制度だ。何度でも借り換えが可能という。
日銀はすでに銀行間取引の目標となる政策金利を0・1%にまで下げており、金利調節面での緩和余力がない。そこで短期金融市場における金利のさらなる低下を促すことを目的に新たな資金供給手段を設けた。
今後、週に1回程度ずつ、8000億円前後の資金供給を行うという。当面10兆円の供給目標を掲げたが、需要次第で増額も検討し期限は設けない。
日銀は企業の資金繰り対策として、企業債務の範囲内で資金を無制限に貸し出す「企業支援特別オペ」を実施しているが、社債やCP市場が安定してきたとの理由で来年3月末で停止する。これに対し、政府や経済界が批判を強めたことも今回の緩和措置を促す要因になった。
経済をデフレから脱却させ、物価安定の下で持続的成長を可能にするのが日銀と政府に課せられた責務だ。日銀は「デフレ」の認識でやっと政府と歩調を合わせた。これから市場が注視するのは政府の対策だ。にもかかわらず、鳩山政権の経済対策には需要を創出するのに必要な成長戦略が明確でなく、加えて主要閣僚の見解もバラバラに迷走してきた。
この点を鳩山首相は強く反省し、性根を据えて円高・株安への緊急対策とデフレに対応する中長期対策に取り組む必要がある。
首相は2日に白川方明日銀総裁と会談する。市場と国民を納得させる明確なメッセージを期待したい。戦略不在の鳩山政権に対する市場の不信感は「頂点に達しつつある」と認識すべきだ。