【主張】行政刷新会議 聖域なく歳出に切り込め
2009.11.11 02:49
このニュースのトピックス:民主党
行政刷新会議が来年度予算概算要求の無駄を削る「事業仕分け」対象を決めた。診療報酬や地方交付税、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)など広範な分野が盛り込まれている。
これらの分野は予算規模や政治判断が必要な点からみて、個別事業の要不要を判断するという単なる「事業仕分け」の域を越えており、本格的予算編成作業に近い。ならば、聖域を設けず大胆に切り込むよう求めたい。
鳩山由紀夫首相も「聖域なき見直し」を表明してはいるが、額面通りには受け取れない。民主党議員と民間有識者によるいわゆる「仕分け人」が短期間で広範な分野をどこまで判断できるか疑問だし、作業を通じて政権公約との矛盾も生じかねない。
来年度が改定年に当たる診療報酬では、医師不足解消を目的にした大幅引き上げが民主党の主張だった。しかし、民間給与が下がる中で医師の診療報酬を上げることに国民が納得するだろうか。
本来なら優遇されすぎた開業医の報酬を削減し、その分を不足する勤務医などに配分すれば済む。その意味で配分見直しの権限を厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会から刷新会議に移したのはいいが、これにも閣内で異論が出ているという。
地方財源拡充の公約を背景に大幅な増額要求となった地方交付税も削らねばならない。高すぎる地方公務員給与を放置したままの増額要求など筋の通る話ではないからだ。では支持基盤である自治労をどこまで抑えられるのか。
思いやり予算も同様だ。対象は地域の民間給与を大幅に上回る基地従業員の人件費だが、基地労組は強い反対勢力である。これを説得するのは容易ではない。
このように、いざ歳出を削減しようとすれば鳩山政権は返り血を浴びる。しかも、95兆円に上る概算要求から目標の3兆円を削ったところで、国債増発を行わないとする公約は危うい。
今年度税収は当初見込みの46兆円から30兆円台後半に落ち込むのが確実で、来年度も税収増は期待できない。国債増発の判断基準を今年度補正予算後の44兆円という甘い水準に置いたとしても、財源はまだまだ足りない。
子ども手当や高速道路無料化など財源の裏付けが希薄な政権公約にはやはり無理がある。現実に則して見直すべきではないか。