【日々是世界 国際情勢分析】親密な関係続くドイツとロシア (1/2ページ)
2009.11.3 07:46
4年前、ドイツでメルケル首相が就任したとき、対ロシア関係についてこう予測した専門家は少なくなかった。
「人権保護などの観点から、プーチンの権威主義政治と距離をとる」
プーチン露前大統領(現首相)と蜜月時代を築いたドイツのシュレーダー氏が首相を退任後、露政府系・ガスプロム関連会社の会長に就任したことへの反発が、メルケル首相にはあるとの観測からだった。しかし、ふたを開けてみると、その分析はどうやら見込み違いだったようだ。
10月26日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)アジア版は「新東方政策」との見出しを掲げ、特集で独露関係の現状を分析した。
2期目のメルケル政権が発足した今、「ドイツとロシアは想像を超えた規模でビジネスを展開している。ロシアびいきの状況でさえある」というのだ。
ドイツはロシアの最大の貿易相手国。両政府の後押しを受け、両国企業間の大口契約も相次いでいる。
8月、資金繰りに窮した独造船大手ワーダンは、独首相自身の働きかけで露元エネルギー相のユスフォフ氏に売却された。独総合電機大手シーメンスは露国営原子力企業ロスアトムと提携契約を結んだ。
独自動車大手オペルは、露国営銀ズベルバンクとカナダの自動車部品大手のグループへの売却計画が進んでいる。
メルケル首相は決して、ロシアの人権問題などに目をつぶっているわけではない。しかし、FTは世界同時不況で、雇用確保などのためにむしろ、両国間の友好が進んでいるとし、専門家の声を紹介した。
【日々是世界 国際情勢分析】親密な関係続くドイツとロシア (2/2ページ)
2009.11.3 07:46
「対露投資へのドイツ世論が変わったことに注目すべきだ。経済危機の前より肯定的になっている」
10月26日付の露紙イズベスチア(電子版)は、2期目のメルケル政権下でも対露政策に大きな変更はないと分析し、「メルケルの計画は、言葉だけでなく行動によってロシアとの戦略的関係を補強するものだ」と報じている。
政権の新外相には、シュレーダー氏の転身に極めて批判的だった自民党のウェスターウェレ党首が就任したが、9月29日付、露経済紙コメルサント(電子版)は「個人が演じる役割は副次的なものだ」と、新外相が対露政策で批判的な姿勢をとったとしても大勢に影響はないとの見方を示した。