【衝撃事件の核心・特別版】北の女スパイ全貌(2) 中国ヤクザも使い脱北者狩り、拉致、色仕掛けの情報収集… (1/5ページ)
2008.9.14 11:45
このニュースのトピックス:衝撃事件の核心
北朝鮮の女スパイ、元正花被告のアルバム写真(ロイター)
任務を受けて中国に“偽装脱北”した北朝鮮の女工作員、元正花(ウオン・ジョンファ)被告(34)。
色仕掛けで誘惑し、情報収集する一方、脱北者を見つけては北朝鮮に送り返したり、中国にいる韓国人を拉致するなど過激な手口の工作活動を展開した。韓国検察当局の起訴状は、スパイ映画さながらの活動実態を浮かび上がらせている。
「脱北者を送り返せ」
ウオン被告は1998年12月末から、朝鮮労働党国家安全保衛部の要員らとともに、中国延吉市豆満江ホテルに泊まりながら、約1週間、工作員活動要領や注意事項などの教育を受けた。
「南朝鮮(韓国)の者に会うときは、ただ商売するような感じで『助けてくれ』と接近しろ。抱き込んだ者を、私の前に連れて来たら、私がその者に金を与えるなどして仕事をさせる。
脱北者になりすまして、脱北者たちと合わせながら、脱北者を探して中国の公安と協力して、北朝鮮に送るようにしろ。脱北者の中に、特に祖国の情報を南朝鮮安企部(韓国の情報機関)の要員に売っぱらう者や、祖国の情報を盗みだす南朝鮮の者を探せ」
保衛部の幹部要員からこんな指示を受けた。
「ここは社会主義社会だが、資本主義も同じだ。だから、それに染まることなく、目をくらますことなく、いつでも祖国を思え。あなたたちが間違いを起こせば、家族に過ちが起きることだけを知っておけ」
「保衛部の女性要員が、中国政府の人間と恋愛をすれば、テープで口を塞いで、箱に入れて北朝鮮に送る」
「韓国人がカラオケボックスに多く来るから、そこの従業員に偽装して勤めれば、韓国の情報機関の者や、彼らにそそのかされた韓国事業家に沢山合うことができる。
そのとき、脱北者だといいながら、自然に接近して、彼らが北朝鮮の情報を取ろうとしたり、祖国に反対する反動分子を支援したりするなどを把握して報告しろ」
脅しと指示が矢継ぎ早に伝えられた。
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中国ヤクザを使い、韓国人を拉致
ウオン被告は指令どおり、99年1月から2000年7月ごろまで毎月300ドルを月給としてもらいながら、主にカラオケボックスなどに通い、脱北者の捜索、北朝鮮情報を収集する韓国人の索出などの仕事をした。
さらにその傍ら、中古車商、錠剤の「ヨート錠」という麻薬の販売、偽ドルの販売などで外貨稼ぎの仕事をした。
カラオケボックスの従業員に偽装就職していたとき、客として遊びに来た韓国人男性と知り合った。
「私は脱北者でお金もなく、居場所もなくカラオケボックスで仕事をしています」
そう誘った。
次の日、男性からもらった番号に電話をかけた。
電話を切ると、ウオン被告は仲間の保衛部要員らに「脱北者だと話すと、関心を示して電話番号をくれた。
ホテルで会おうというのを見ると、北朝鮮の情報を収集する韓国の情報機関の人間か、その手先の可能性がある」と報告した。
ウオン被告は、仲間の保衛部要員らが動員した中国公安に偽装した中国ヤクザたちをホテルの前に待機させた。そして、男性の部屋に入っていった。
男性はウオン被告が部屋に入ると、「中国の金1500元をやるから、北朝鮮に行って軍部隊の墓地や軍需品工場、北朝鮮住民の実態などを写真すことができるか」と依頼してきた。
「私は北朝鮮に簡単に入って行くことができる。写真を写してあげる。友人と一緒にやらなければならないから、電話をするわ」
元被告はこう応対し、事前に仲間と決めていた隠語で“友人”に電話した。
「ねえ、私。私が今、いい人に会っているから紹介してあげる」
間もなく、部屋の外にいた仲間や中国公安の服装をした中国ヤクザたちが、部屋に人って来て、男性に手錠をかけ、保衛部要員のアジトである豆満江ホテルの部屋に拉致して行った。
こうした手口で元被告らが拉致した韓国人らは100人以上にのぼる。
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色仕掛け、偽装結婚…そして韓国へ
ウオン被告は2000年9月初旬、中国フンチュン市にあるロシア通りで木製器製造業をしている韓国人男性と知り合い、抱き込むことを画策した。
翌10月ごろ、男性の妻が韓国に戻ったすきに、定期的に男性と性関係を持ち、01年6月まで同居した。男性の木製器工場に投資もしたが、男性がその金を持って逃げようとしたため、同居をやめた。
01年8月、男性の妻がウオン被告との関係に気づき、中国に再入国して、男性を連れて韓国へ帰って行ったため、それ以上、男性とは会えなくなった。
元被告には、並行して別の“ミッション”も与えられていた。
「同志を南朝鮮へ派遣しろという党の命令が下された。同志は党の恩恵を受け、浸透訓練まで受けた者であるから、このようなときに同志が祖国に、忠誠をつくさねばならないのではないか。任務を遂行してくれば、朝鮮労働党員になるだろうし、名誉称号が与えられるだろう」
「分かりました。党の命令であれば行きます。
南朝鮮へ行く方法を教えてください、最近、偽装結婚して沢山行きますが、もし、結婚の手続きで行くときは、戸籍簿がなければなりません。戸籍簿を作ってください」
ウオン被告は朝鮮族の男を通じて戸籍簿を入手し、中国の朝鮮族「金ヘヨン」(1977年3月15日生、中国黒竜江省林口県ヨンジョ鎮一心村48岩一)になりすました。
ウオン被告は韓国人男性との偽装結婚の準備を進める。01年3月、瀋陽ソタプカの民宿の女主人の紹介を受けて、モジュに行き、そこに滞在していた韓国人男性と、その父に会った。男性が愚かに見えるや、韓国潜入に適確であると考え、男性と結婚することにした。
その日、男性とモーテルで性関係を持ち、次の日、男性とその父を連れて木丹江にある偽の父母に会って挨拶をさせた。男性と父は韓国に帰った。
「結婚する相手が(韓国の)揚州にいる」
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ウオン被告の報告に、仲間の保衛部要員は「よくやった。その周辺に米軍の部隊が沢山ある。今後、米軍部隊の動静把握が容易になるだろう」と喜んだ。
「米軍基地の情報を入手せよ」
その後、韓国入国ビザが出るのを待っていたところ、先に抱え込みを図った木製器工場の男性の子を身ごもった事実を知った。
「男性を抱き込む過程で、失敗して妊娠してしまった」
ウオン被告がこう報告すると、仲間の幹部要員は「妊娠したことは、むしろよくやった。そのまま、その状態で南朝鮮に行けば、疑われない。子供は、任務遂行してきてから、祖国でよく育ててくれるだろう。名誉も得て、誇らしいじゃないか」と激励された。
01年9月、北京の韓国大使館で、「金ヘヨン」になりすまし、同人名義で韓国旅券の発給を受けた。そして、保衛部上官から指令が下る。
「南朝鮮に行き、浦川、議政府、東豆川、龍山などにある米軍基地と平澤の米軍基地があるから、全部カメラで写し、祖国に対して、南朝鮮の新聞に載っている社説を持って来い。位置と全景の写真、新聞に載った北朝鮮関連の社説を集めて持って来い」
指令とともに渡されたのは、米軍部隊の撮影用小型日本製デジタルカメラ1台と、自殺用の毒薬6錠、工作資金1万ドルだった。
その場で、忠誠宣誓文(基盤に党のマーク、薄緑色A4程の用紙1枚)を作成、提出した。
《忠誠宣誓文》
祖国に全ての忠誠を尽くし、将軍様の戦士として、この一つの体全てを捧げる忠臣になります。
どのような誘惑の風が吹こうとも、揺れ動かされず、変わりなく任務を完遂するということを決意します。
誓約者 元正花
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韓国潜入「健闘を祈る」
幹部要員はウオン被告にこう言った。
「もし捕まったら一次的に、(北朝鮮では)一般の工場や農村で生活していたと話せ。拷問が激しければ、社労青(社会主義労働青年同盟)と刑務官の生活をしたとつけ加え、
そして、韓国人男性の子供を妊娠し、男性を捜しに来たと話せば大丈夫だろう。どんな場合でも、特殊部隊については絶対に話すな」
「体に気をつけて、無事に帰って来ることを祈る。そして、カメラをよく保管しろ」
元被告は01年10月23日ごろ、「金ヘヨン」名義の虚偽旅券を所持して、北京空港から北方航空便を利用して、仁川国際空港に入国した。入国するやいなや、仁川国際空港1階に設置されている公衆電話を利用して、中国の幹部要員の携帯電話に電話した。
「無事に到着しました」
これに幹部要員は手短に返した。
「分かった。体に気をつけろ。健闘を祈る」
=北の女スパイ全貌(3)へ続く
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