なぜ,ここまで開き直ることができるのか?。
すさまじいばかりの怒り。
これまでの体験から身に付いた感覚。先天的な感覚の違いもある。
子供は強い。家庭ばかりのせいにもできない。
【衝撃事件の核心】被害者は「蚊」「シマウマ」 8人殺傷被告の“異常な世界観”を育てた家族の情景 (1/5ページ)
2009.6.6 18:00
このニュースのトピックス:土浦8人殺傷事件
金川真大被告(左)はげっそりと痩せ、あごにはひげを生やしていた=3日午前、水戸地裁(イラスト・今泉有美子)
「勾留(こうりゅう)中は殺しのこととかを考えています」「死刑にならなかったら2、3人殺します」。茨城県土浦市のJR荒川沖駅周辺で、通行人ら8人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた金川(かながわ)真大被告(25)の第3回公判では、1回限りとなる予定の被告人質問が行われ、被告は凶暴性をむき出しにした暴言を連発した。
一方、証人尋問に臨んだ被告の父親(60)は、お互いに干渉せず、筆談が飛び交うなどしていた5人家族の日常生活を説明。目の前の息子を「被告人」と呼ぶ場面もあり、ドライな家族関係を感じさせた。(芦川雄大)
証言台たたいて言いたい放題! 家族の苦しみ「どうでもいい」
3日の水戸地裁。午後の審理から証言席に立った金川被告は最初からテンションが高く、まゆをしかめる弁護人を相手に、自分の「言い分」を堂々と披露した。
本人が理解しているかは不明だが、Tシャツの胸には「妨害」を意味する「disturb」の文字。やや幼い顔には、初公判では目立たなかったあごひげと口ひげが伸びていた。
弁護人「人を殺すことはどういうことだと考えていますか」
被告「蚊を殺すことと同じことです」
弁護人「蚊? 蚊とは虫のあの蚊ですか」
被告「はい。蚊を殺すのも、この机を壊すのも同じです」
被告はそう言いながら右手で思い切り「ドン」と証言台をたたき、大きな音が法廷に響いた。
続いて罪の意識の有無を問われると、こう言い切った。
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2009.6.6 18:00
このニュースのトピックス:土浦8人殺傷事件
金川真大被告(左)はげっそりと痩せ、あごにはひげを生やしていた=3日午前、水戸地裁(イラスト・今泉有美子)
被告「感じません。ライオンがシマウマを食べるとき、シマウマに悪いと感じるのでしょうか」
弁護人「殺される人はシマウマ?」
被告「そうです」
弁護人「家族が苦しむとか周りが苦しむとか、そのことについてはどう思うの?」
被告「どうでもいいことです」
自らを百獣の王にたとえているのだろう。だが、色白で細身の体とライオンとは、あまりイメージが結びつかない。
その後も、「(最初は)10人ぐらい殺そうとした」「勾留中は殺しのこととかを考えています」などと、被告は反社会的な暴言を繰り返した。
高校時代、課題提出の際にイライラを募らせ、日本刀の模造刀を外で振り回したことも明かされ、凶暴性や異常行動が最近生じたものではないことを印象づけた。
被害者を蚊やシマウマに例える「言いたい放題」の被告を傍聴席で見つめる関係者らは、どうすることもできず、いらいらした様子で見つめていた。
死刑のためならまた殺す…ボールペンがあれば「戦闘能力奪える」
金川被告はファンタジーの世界を愛しており、「現実の世界では魔法が使えない」ことなどから、人生はつまらず、死にたいと考えるようになった。確実に、苦しまず死ぬには死刑が1番で、死刑になるために無差別殺傷を実行した-。
これが弁護側が主張している事件の動機だ。検察側も同様に、動機は「多くの人を殺害して死刑になるため」だったとしている。
弁護人が「仮に、誰も殺さなくても『死刑になりたいと言ったらなれる』制度があったらどうする?」と尋ねると、被告が「その制度を利用します。それは自分でギロチンのボタンを押す(=自殺する)よりはずっと楽ですから」と答えるやり取りもあった。
【衝撃事件の核心】被害者は「蚊」「シマウマ」 8人殺傷被告の“異常な世界観”を育てた家族の情景 (3/5ページ)
2009.6.6 18:00
このニュースのトピックス:土浦8人殺傷事件
金川真大被告(左)はげっそりと痩せ、あごにはひげを生やしていた=3日午前、水戸地裁(イラスト・今泉有美子)
被告は「人生がつまらなかった」理由を問われると、「この世界にはこの世界しかないから」と独特の言葉で表現した。
社会に対して突き放した言い方をする一方で、「刎頸(ふんけい)の友とか、管鮑(かんぽう)の交わりとか、お互いによく理解し合って助け合える関係が築けるなら、(彼女や友人が)いた方がよかった。
そこまで親しく理解しあえる人とは出会えていない」と、中国の故事を引き合いに出し、人間関係に恵まれなかったことをぽつりと語る場面もあった。
被告は人との接触を拒み、事件直前の約6年間、ほとんど会話のない「引きこもり」だったとされる。前回公判では、女性経験がないことも明かされている。
一方、現在の処遇をめぐってはかなり不満がたまっているようだ。事件を起こしてもなかなか死刑にならず、すでに約1年間にわたって勾留されていることが「予想外」だったとし、結果的に死刑にならなかったら「(さらに)2、3人殺します」と発言。すでにその考えを実行する準備とも取れる行動があったことも、被告人質問で明らかになった。
被告が勾留されている房から一時的に出る際、ボールペンを3回にわたってこっそり房から持ち出し、懲罰を受けた、というのがその内容だ。ボールペンを隠し持ったまま、鑑定医と2人きりになったこともあるという。
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金川真大被告(左)はげっそりと痩せ、あごにはひげを生やしていた=3日午前、水戸地裁(イラスト・今泉有美子)
「ボールペンでは人を殺せない」とする弁護人に対し、被告は「視力を奪えば『戦闘能力』を大幅に奪えます」と、ゲームのような言い回しを使って反論した。結局、このボールペンを使ってだれかに危害を加えることはなかったが、被告は「警告だった」だとする不気味な表現も使った。
冷たい家族関係…父親は目の前で「死刑」連発
これまで公判で明らかになった情報を総合すると、この日、証人として出廷した金川被告の父親は中央省庁で働いていたが、昨年定年退職し、別の職場に勤務している。
スーツにネクタイ、革靴姿で、カバンを持って法廷に現れた。
父、母、被告、妹、弟。独立した「下の妹」を除く5人で構成される金川一家の日常は、聞く者に驚くほど冷たい印象を与えるものだった。
前回公判では被告の3人のきょうだいの供述調書が読み上げられている。「兄は他人同様」(下の妹)、「(私は家族に)関心がない」(上の妹)、「兄が家からいなくなっても何も思わない」(弟)などとする内容だった。上の妹は被告と仲が悪く、当初、殺害のターゲットだったとされている。
父親は「普通の家族と思っていた」「家族に関心はあった」としたが、「信頼していたので干渉を避けていた」と説明。引きこもり状態だった被告の進路について話し合ったことは「あまりない」。被告の妹が不登校になったときには「特に何もしなかった」。
妻と娘が一切会話しないことについては「『困ったな』と思いました。家内に『ちょっと心配している』と告げました」。家庭内の問題について、積極的に解決を図ってこなかったことが浮き彫りになった。
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2009.6.6 18:00
このニュースのトピックス:土浦8人殺傷事件
金川真大被告(左)はげっそりと痩せ、あごにはひげを生やしていた=3日午前、水戸地裁(イラスト・今泉有美子)
弁護人が「娘に直接、家でしゃべらない理由を聞くのが普通ではないか」と尋ねると、「(指導する)タイミングというのがあります」と答えた父親。
それではタイミングがなければ息子にも苦言を呈さず、仮に死刑になっても見送るだけなのか、と問われると「そのときはしようがないです」とあっさり認めた。
最後に「本人に言っておきたいこと」を鈴嶋晋一裁判長から尋ねられると、息子を「被告人」と呼び、「犯したことは重大なことで、許されることではないということを認識してほしい。
気がついた暁(あかつき)には、謝罪した上で男らしく責任を取れ、と言いたいです」と、本人が目の前にいるのに、裁判長の方を見ながら間接的にメッセージを送った。法廷を後にするときも目を合わせなかった。
だが、終始淡々としていた父親の口調が強まる場面があった。弁護人から「あなたは理性的に100%の答えを出そうとしていると感じる。本音はどうなのか」と“挑発”された直後のことだ。
「私は死刑を、死刑になってしかるべき、死刑にすべきと思います」
目の前で「死刑」と3回繰り返した父親を、被告は顔色を変えることなく見ていた。
皮肉にも、直後の被告人質問で被告は、父親がこんなにしゃべっているのを見たのは「初めて」と明かした。そして、「常識に洗脳されている」と酷評した。
被告の弁護人は「家庭の問題が、犯行の素地になっている可能性がある」と指摘している。
◇
次回の第4回公判は19日午後1時半から。捜査段階で精神鑑定を担当した鑑定医の男性への証人尋問などが行われる予定となっている。