江戸始図:初期江戸城の最古級絵図見つかる 松江市
毎日新聞
17 時間前
29.02.09.
松江市は8日、徳川家康が築いた当初の江戸城を描いた最古級の絵図「江戸始図(はじめず)」(縦27.6センチ、横40センチ)が見つかったと発表した。天守は姫路城のような「連立式天守」だったことが確実になり、本丸南側出入り口には、外敵の侵入を妨げる熊本城と同じ仕組みが構築されていたことが判明した。専門家は「大坂の陣を控えた時期で、家康が戦いを意識して当時最強といえる城を築いたことが明らかになった」としている。
市によると、江戸城を描いた最古の絵図は、東京都立中央図書館が所蔵する「慶長江戸絵図」(縦80.6センチ、横81.7センチ)。江戸始図も、記された大名の名前などから、同時期の慶長12~14年(1607~09)に描かれたとみられる。
江戸城の天守は二代将軍・秀忠と三代将軍・家光が建て替え、1657年の「明暦の大火」で焼失するなどしたため、家康時代の詳細は不明だった。慶長江戸絵図では、天守などの構造物が独立して記されていたが、江戸始図は形や建物のつながりが黒色で示されており、天守の姿がより鮮明に浮かび上がった。「大天守」の北と西に「小天守」があり、櫓(やぐら)や塀でつないでいたと読み取れるという。
さらに本丸の南側には、石垣によって通路を蛇行させることで侵入者を前後左右から弓矢や銃で攻撃できる「外枡形(そとますがた)」と呼ばれる構造が五つ連続で配置されていたことが分かった。城づくりの名人といわれた戦国武将、加藤清正が築いた熊本城と同じ防御方法を採用したとみられる。
江戸始図は松江市の男性が1953年に市に寄贈した絵図集「極秘諸国城図」(74枚)の1枚。昨年7月、大坂城の「真田丸」の最古級の絵図が見つかり、再調査して今回の発見につながった。
江戸城を描いた最古級とみられる絵図「江戸始図」=松江歴史館提供© 毎日新聞 江戸城を描いた最古級とみられる絵図「江戸始図」=松江歴史館提供
調査を担当した千田嘉博・奈良大教授(城郭考古学)は「家康時代の江戸城の史料は少ない。松江藩は親藩だったので、規制が厳しい中でも絵図を保管できたのかもしれない」としている。
江戸始図は、松江歴史館(松江市殿町)で17日から3月15日まで公開される。【長宗拓弥】