重文仏像:所在不明の2体巡り提訴 滋賀と東京の寺
毎日新聞
11 時間前
28.05.12.
滋賀県甲賀市の大岡寺(天台宗系)で約15年前から所在不明になっている国の重要文化財の仏像2体について、東京都品川区の同宗の寺が所有権を主張し、大岡寺を相手取って確認を求める訴訟を大津地裁に起こしたことが分かった。品川の寺は証拠提出した文書で2体の保管を示唆しており、所在確認を「長年の懸案」と位置づけている文化庁も訴訟の行方を注視している。
2体は「木造千手観音立像」(鎌倉時代造)と「木造阿弥陀如来(あみだにょらい)立像」(平安時代造)。いずれも高さ約1メートルで、大岡寺にあった1909(明治42)年に旧国宝に指定され、その後に重要文化財となった。
訴状で、品川の寺はこの2体について、「2006年に大岡寺から無償譲渡を受けた」と主張。譲渡契約を記したとされる書類一式を証拠として提出した。これに対し、大岡寺は「譲渡をした事実はない」「盗まれたものだ」などと反論する答弁書を出しており、所有権を真っ向から争っている。
滋賀県によると、2体は00年ごろ、大岡寺の関係者を通じて東京近辺に流出し、その後所在不明になった、と01年に大岡寺側から届け出などがあり、大岡寺は昨年になって文化庁に盗難届を出したという。
一方、文化庁によると、品川の寺は昨年8月、文化財保護法に基づき2体の所有者変更を同庁に届け出た。仏像の所在地として寺の住所が記されていたが、同庁は「大岡寺に確認できていない」との理由で不受理とした。
文化庁にはこの15年間で「所持者の代理人」など関係者を自称する複数の人物が数十回訪れて所有権を認めるよう迫るなどしていたという。ただ、詳しく問い詰めると所在を含めて詳細を明かさないケースばかりで、現物を確認できないままになっていた。
今回の訴訟を受け、文化庁美術学芸課は「文化財の所在や保管状況が不明であることは適切ではなく、明らかになることを願っている。何らかの対応を考えたい」として、滋賀県文化財保護課と連携し、訴訟の傍聴などにより情報収集を進める考えだ。
品川の寺や代理人弁護士は毎日新聞の取材に「何もお話しできない」と述べ、2体の所在についても明らかにしなかった。大岡寺の代表役員の男性は「取材には答えられない」としている。
訴訟は13日に第1回口頭弁論が予定されている。【大原一城】