CO2:高度10キロの上空でも濃度上昇中
毎日新聞
25.05.17.
7 時間前
高度約10キロの上空で、二酸化炭素(CO2)の濃度が上昇し続けていることを発見したと、気象研究所と国立環境研究所などのチームが米地球物理学会誌に発表した。1993〜2013年のデータを解析した。産業活動が活発な北半球での増加が目立ち、人間活動の影響が高層まで及んでいることを示す成果として注目されそうだ。
地球温暖化対策を検討する際、地表付近の二酸化炭素の濃度の分析は進んでいるが、上空は観測が難しいため実態が分かっていなかった。
チームは、大型旅客機に搭載できる二酸化炭素濃度の測定装置を開発。日本航空の国際便に載せ、20年かけてデータを集めた。
その結果、高度10キロ付近の濃度は、北半球、南半球ともに増加傾向が続き、特に01年以降の伸び率がそれまでの数年間に比べて約10%高くなっていた。増加率は化石燃料を使うことによる排出量の変化と一致し、中国やインドなどの成長が背景にあると考えられる。
また、北半球での濃度上昇幅は、南半球より0.8ppm(ppmは100万分の1)高かった。産業革命前の高度10キロの濃度を推計すると、南半球の濃度上昇幅が北半球より高かったことも分かり、その後の北半球を中心とする産業活動の活発化によって逆転したとみられる。
気象研究所の松枝秀和室長(大気化学)は「人間活動が地球大気の構造を変えたといえる。上空のCO2の濃度や変化を把握できれば、温暖化予測の精度向上や対策に役立つだろう」と話す。【田中泰義】