【主張】
北方領土2等分 「妄言」には惑わされるな
2013.5.5 03:13 (1/2ページ)[主張]
プーチン露大統領が安倍晋三首相との首脳会談で、中国やノルウェーとの領土・境界画定問題にふれ、係争地の面積を2等分する方式で解決したことを強調した。
プーチン氏はこの決着方式に触れた際、北方領土問題に絡めることをしなかったとはいう。
強く訴えたい。プーチン発言の意図がどこにあれ、真剣に検討、忖度(そんたく)したりするだけで、日本の世論分断をはかるロシアの思うつぼになることだ。愚挙は絶対に避けなければならない。
「面積等分論」は、麻生太郎副総理が外相時代の2006年に言及した。現内閣官房参与の谷内正太郎元外務事務次官も09年、「個人的には3・5島返還でもいい」と発言したとされる。森喜朗元首相が「3島返還」の段階的解決案を示唆したのは今年1月だ。
歴史的経緯を無視した妄言が消えては現れる事態が続いていることは極めて遺憾だ。北方四島は日本固有の領土であり、第二次世界大戦終結時にソ連が日ソ中立条約を破棄して武力で不法占拠したことは動かしがたい事実だ。
領土は数合わせや折半する類いのものではなく、日本が譲歩すべき理由は何一つない。惑わされれば、尖閣諸島(沖縄県石垣市)や竹島(島根県隠岐の島町)をめぐる対立で、中韓両国に足元を見られかねない。
北方領土2等分 「妄言」には惑わされるな
2013.5.5 03:13 (2/2ページ)[主張]
プーチン氏は首相と、領土交渉を加速化させることで合意したが、真摯(しんし)に解決に努める姿勢は見受けられないことは残念だ。
最初に大統領に就任した00年以降、領土交渉は一歩たりとも前進していない。北方領土ではロシア側が軍備を強化し、米韓など第三国の企業の進出も続く。解決したいと本当に望むのであれば、こうした動きに待ったをかけるのが筋というものだ。
安倍首相は、「四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」という基本姿勢を改めて国民に強調し、返還実現に向けて国論を引き締めてほしい。「個人的な信頼関係が生まれた」と語った以上、忌憚(きたん)のない意見をプーチン氏にぶつけてもらいたい。
日露首脳は会談後の共同声明で、両国関係の将来を「相互信頼と互恵の原則」という言葉で規定した。プーチン氏は国内政治では強権的な手法を駆使しているが、北方領土問題でも、強い指導力を発揮してもらいたい。