糖尿病薬で不眠改善 国際医学誌に発表
2013年04月16日更新
佐賀新聞
糖尿病治療薬「DPP4阻害薬」が血糖値を下げる本来の作用とは別に不眠を改善させることを、佐賀大学医学部循環器内科の野出孝一教授らの研究チームが突き止め、国際医学誌「心臓糖尿病学誌」電子版に発表した。野出教授は「糖尿病患者の3分の1が不眠症といわれており、薬を選ぶ際の判断基準となる研究成果」としている。
生活習慣病とされる2型糖尿病は、インスリンの不足などで血糖値が高くなる病気。脳卒中や心不全などの合併症を引き起こすほか、睡眠障害も多いとされる。
DPP4阻害薬は、インスリンの分泌を促すホルモン「インクレチン」を分解してしまう酵素DPP4の働きを阻害し、血糖値を下げる。研究チームは野出教授のほか、尾山純一教授、坂本佳子研究員で構成。この薬が発売された約3年前から、多面的作用を解明するため、臨床研究に取り組んでいる。
研究では、県内の医療機関の協力で糖尿病患者188人にこの薬を投与し、前後3カ月の状態を比較。スコアが高いほど睡眠障害が重いPSQI調査では、不眠が深刻な患者群でスコアが8.0ポイントから6.2ポイントに改善した。また、生活の質(QOL)全般を調べるVAS調査でもスコアの改善がみられた。
チームはさらに、DPP4阻害薬本来の作用である血糖の低下度と睡眠の改善度を比較したが、相関関係はなかった。チームは「なぜ不眠が改善されたのか分からないが、インクレチンが脳の体内時計遺伝子に影響したのかもしれないし、この薬による分解を阻害されたインクレチン以外のホルモンが作用した可能性もある」としている。
現在、野出教授が主任研究者となり、全国17大学と連携してDPP4阻害薬の効果を調べる研究が進んでいる。