【甘口辛口】
高見盛に配慮欠いた相撲協会…功労者に報いを
2013.1.28 16:51 (1/2ページ)[甘口辛口]
■1月28日
熱戦の幕を閉じた大相撲初場所で最も注目を集めたのは横綱、大関ではなく十両の高見盛だった。幕下転落は免れない5勝10敗で終え引退を表明した。負けが込むにつれ館内の拍手、声援が増し、最後の「入魂パフォーマンス」に声をかけ館内が一つになった。この力士がいかに愛されていたか改めて知った。
最高位は小結で戦績は並みの力士。しかし、記録より記憶に残る点で五指に入る存在だった。腕を上下に振り胸板を叩く「入魂パフォーマンス」は当初協会首脳から「マナーを考えろ」と苦言も出たが、それを聞いたファンから「一生懸命気合を入れてどこが悪い」と抗議が殺到、以後黙認された。
場所終盤、早い時間から客足が伸びたのも「人気者の見納め」もあったろう。しかし、この功労者に協会は冷たかった。負け越しが決まっても必死に土俵を務めているのに「もうアウト」「(十両に)残れるはずがない」と審判部幹部は言った。「千秋楽まで何も言えない」と言うべきで、これでは精神的な“いじめ”に近い。
9敗目となった12日目から高見盛は取材が殺到する館内をスルーし、両国駅前のタクシー乗り場まで多くの報道陣を引き連れ歩きながら話した。大勢の通行人が「何事か」と驚いていた。まるで“さらし者”のような光景で「迷惑がかかる。館内の小部屋を使って話すように」と協会は配慮してもよかった。
高見盛に配慮欠いた相撲協会…功労者に報いを
2013.1.28 16:51 (2/2ページ)[甘口辛口]
14年間愚直なまでに勤め上げ、若貴以降の相撲人気を支えた功労者として協会は「特別敢闘賞」で報いたらどうか。前例がないと言うなら前例を作る勇気がほしい。闘志を前面に出す第二、第三の高見盛を目指す力士が出てくるためにも、ぜひ一考を願いたい。(今村忠 サンケイスポーツ)