【中国書記官スパイ疑惑】
記者、留学…対日工作員、日本の先端技術獲得も
2012.5.29 14:44 (1/2ページ)
【北京=矢板明夫】中国共産党、政府、人民解放軍はそれぞれ独自の情報機関を抱えており、外国に工作員を送っている。
元シドニー駐在の中国の外交官で2005年にオーストラリアに亡命した陳用林氏の証言によれば、工作員たちは外交官やメディアの記者、国有企業の社員、または留学生などの形で海外に送られる。
共産党内の工作機関は、外交担当の中央連絡部と、台湾、香港及び世界中の華僑団体を担当する統一戦線部が中心。政府の情報機関としては国家安全省がある。
そして今回、中国大使館の書記官が関係しているとされる解放軍の総参謀部2部は、戦争時代の軍事情報部が前身で、中国の情報機関の中で最も力を持っているとされる。
日中関係筋によれば、中国の工作員の主な来日目的は4つ。(1)日本の先端産業技術の獲得(2)中国の政治、外交、軍事情報の収集(3)対台湾工作の拠点の構築(4)民主化活動家、チベット、ウイグル独立派に関する情報収集などだ。
記者、留学…対日工作員、日本の先端技術獲得も
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このほか、日本の政財界で広く人脈を築き、日中間にトラブルなどが発生するとき、日本の要人に対し中国に有利なロビー活動を展開することも工作員の仕事の一つ。
今年5月に東京で世界ウイグル人会議が開かれたが、中国当局はウイグル人の主張が日本で影響拡大を警戒し、日本政治家、外務省関係者に対し働きかけ、ウイグル人代表の日本入国ビザを出さないようになど、さまざまな妨害工作を行ったとされる。
また、プロの工作員のほか、情報機関に定期的に情報を提供する多くの周辺者もいる。今回、警視庁に出頭が求められた書記官は、大学の研究員時代の自身の外国人登録証で口座を開き、民間企業の役員名簿に実名を掲載するなど、わきが甘いがところがあり、工作員よりもその周辺者の可能性がある。