大イチョウ残った 豊川市が施設建設を断念
2010年5月22日 16時02分
そのまま保存されることになった大イチョウ=愛知県豊川市豊津町で
大きなイチョウの木を守りたい-。愛知県豊川市の住民が、そんな思いを込めて集めた署名が行政を動かした。大イチョウのある広場に学校給食センター建設を計画していた市は、住民感情に配慮して断念。計画が実現すれば大イチョウへの影響は免れなかっただけに、住民たちは「イチョウを守れてうれしい」と喜びをかみしめている。
大イチョウは高さ約25メートル、枝を広げた横幅は約30メートルもあり打ち出の小づちのように見える。同市豊津町の旧大和小学校の校庭だった広場にあり、地元の人たちはみな大イチョウのもとで子ども時代を過ごした。
一昨年、本紙などが紹介し、イチョウ目当ての観光客が急増。昨年10月の台風で枝や葉が飛ばされる被害を受けたが、地元の人たちがつくる「大和のおたすけ隊」が寄付金を募り、樹木の専門家を呼ぶなどしてイチョウの“治療”をしていた。
センターの計画は、2006年に吸収合併した旧一宮町との合意をもとに、いったんは決定。老朽化した市内の3調理場などを廃止する代わりに、大イチョウのすぐ東隣に約2700平方メートルのセンターを建設し、イチョウの周囲をアスファルトで固めて駐車場をつくる計画だった。
ところが昨年12月、計画を知った地元自治会は「基礎工事でイチョウの根が切られてしまう。景観も台無しになる」などと建設反対の署名集めを開始。地区住民の7割近くに当たる700人余の署名を市に提出した。
直後に開かれた市議会生活文教委員会では、計画を報告する市に対し委員から「地元との調整が大事」との注文が付き、市は計画の白紙撤回を決定。20日に市議会議長や各会派に報告した。山脇実市長は「地元と慎重に協議を進めてきたが、総合的に判断した。イチョウは貴重な観光資源であり、観光施策への活用も検討したい」と話す。市は今後、計画の見直しを進める。
大和のおたすけ隊の市川洋至(ひろゆき)代表は「イチョウが守られることになり、すごくうれしい。イチョウを訪ねる観光ツアーを地元で支援したい」と歓迎している。
(中日新聞)