【岐阜】
河口堰、酸欠で「死の海」 長良川で環境団体がヘドロ調査
2010年4月26日中日新聞
長良川河口堰の上流で採取したヘドロを見る参加者ら=三重県桑名市で
東海3県の環境団体などでつくる「市民による『豊かな海づくり大会』実行委員会」は25日、三重県桑名市の長良川河口堰(ぜき)周辺で「ヘドロを見る会」を開いた。堰の上下流の川底からは真っ黒で異臭を放つヘドロが採取され、参加者は船上からゲート開放を訴えた。
同実行委は、6月に関市の長良川で開かれる「第30回全国豊かな海づくり大会」に合わせて「河口堰問題を直視しよう」と結成。大会の1週間前に独自の海づくり大会を開く予定で、プレイベントとしてヘドロを見る会を企画した。
参加者は船に乗り、長良川の河口堰の下流2カ所、上流1カ所と、河口堰のない揖斐川河口1カ所の計4カ所の川底の泥を採取し、比較した。
長良川の3カ所の泥はいずれも、含有酸素量を示す「酸化還元電位」の数値がマイナスで酸欠状態。真っ黒で粘性の高いヘドロがほとんどだった。一方、揖斐川の川底はすべて砂で酸素が豊富。生きたヤマトシジミも確認された。
岐阜大の粕谷志郎教授(環境生態学)によると、堰上流には川から流れてきた有機物が堆積(たいせき)。堰が海水と淡水を分離したため、堰下流ではゲートを超えた比重の軽い淡水と、重い海水が層を形成。底に新しい酸素が行き渡らず「酸素が必要な生物が生きられない死の海」になっているという。
また、堰で潮の干満がなくなったために激減したヨシ原も見学。岐阜大の山内克典名誉教授(動物生態学)によると、1995年の堰運用から8年で、河口のヨシ原の9割が消え、水の浄化作用が失われたという。今本博健京大名誉教授(河川工学)は「当時の河川工学が環境への配慮を欠いていたことは明らか。これらの情報を市民や行政が共有し、ゲート開放の必要性を考えるべきだ」と話している。 (山本真嗣)