中国で「人民元」切り上げ観測広がる 新華社「年内に3~5%」 (1/2ページ)
2010.3.8 17:55
【上海=河崎真澄】中国国内で通貨「人民元」の切り上げ観測が広がっている。2008年7月から対ドルで1ドル=6・82元前後にほぼ固定されてきた元相場について、中国国営新華社通信が8日、相場の安定は不変としながらも、年内に3~5%上昇する可能性があるとの複数の研究機関の見方を伝えた。
切り上げを否定する報道が影を潜め、容認論が出始めたことで、市場関係者には「14日の全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後、相場が再び動き出す可能性がある」との見方が出ている。
新華社の報道は、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が6日、北京での記者会見で、金融危機の影響が薄らいだ段階で元切り上げを容認する姿勢を示したことを受けたものとみられる。
同時に、「年内の元切り上げの有無や変動幅は米国の要求に中国がいかに対処するかによる」とする復旦大学中国経済研究センターの張軍主任のコメントも伝え、政治判断として中国当局が相場変動の再開時期や変動幅などを探っているようすもうかがわせた。
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2010.3.8 17:55
切り上げ論議が高まってきたのは、元相場の現行水準を維持するため当局が大規模なドル買い元売り介入を続け、大量の元が市場に供給されると、資産バブルやインフレの傾向が一段と強まるとの懸念があるためだ。
さらに昨年12月以降の貿易統計で中国の輸出が回復する傾向が鮮明になり、元が25~40%割安に評価されているとみる欧米からの圧力が再び強まってきた。
米上院では2月下旬、中国の「為替操作」が、不正な輸出補助金に当たらないかどうか調査を求める動きも出た。米政府が「為替操作」と認定すれば、中国製品に高関税が課せられるなど制裁措置が取られる。
元相場をめぐっては、中国金融当局が05年7月21日、元を約2%切り上げる一方、1日あたりの変動幅の限度を定める管理型の変動相場制に移行した。
08年7月にかけて元相場は約20%上昇したが、世界的な金融危機で中国の輸出低迷が広がって以降、国内産業の保護を目的に元相場を現行水準にほぼ固定してきた。