【安藤が斬る】「小沢不起訴」で見えた「全面可視化」大合唱のナンセンス (1/5ページ)
2010.2.14 18:00
このニュースのトピックス:特捜部
報道陣の質問に応じる民主党の小沢一郎幹事長=4日午後、東京・永田町の民主党本部(古厩正樹撮影)
東京地検特捜部の捜査の行方が注目された民主党の小沢一郎幹事長の“政治とカネ”問題。政治資金規正法にある収支報告書への虚偽記載をめぐる問題では元秘書ら3人が起訴され、小沢氏本人は嫌疑不十分で不起訴となった。
起訴された元秘書で衆院議員、石川知裕被告は離党し、小沢氏は引き続き幹事長続投を表明、党内で小沢幹事長の責任論は封印-という何とも不可解な既定路線が繰り広げられている。
事件が与党最高実力者をめぐる疑惑だったことから、検察のあり方にさまざまな批判が繰り広げられ、中には「検察リーク」や「検察ファッショ」などと検察の不当を論う声が出されたこともこの事件の特徴的な動きだった。
中には取調室での取り調べをビデオカメラに収める「捜査の全面可視化」が必要という主張すら聞かれた。だが、果たしてそうした主張は妥当なものなのだろうか。
石川被告が逮捕された1月15日以降の与党側の動きをもう一度見てみる。石川被告が逮捕された翌日に開催された民主党の党大会。声を荒らげて検察への全面対決を唱える小沢幹事長に鳩山由紀夫首相は「どうぞ戦って下さい」と述べた。
検察制度のあり方を考えるとして「石川知裕代議士の逮捕を考える会」なる議員の集まりができ、政府の一員である政務官4人を含む民主党所属議員13人が参加した。連日テレビ番組には与党議員が出演、事件を報じるメディアと検察が一体になって世論を誘導する情報操作「検察リーク」が問題-などとやり玉に挙げた。
勾留期限の4日が迫ると民主党の「可視化議連」の会合がセッティングされ、法務官僚を呼んで全面可視化の是非を検討する手はずになっていた。
小沢幹事長の不起訴の流れが伝えられると、この会合は急きょ取りやめになったが、参加予定のメンバーからは「天の声だよ。起訴されなくなったから、もうやる意味はないということだ。そもそも(可視化を嫌がる)検察に圧力をかけるのが狙いだったから…」。こういう聞き捨てならない声も聞かれた。
【安藤が斬る】「小沢不起訴」で見えた「全面可視化」大合唱のナンセンス (2/5ページ)
2010.2.14 18:00
このニュースのトピックス:特捜部
報道陣の質問に応じる民主党の小沢一郎幹事長=4日午後、東京・永田町の民主党本部(古厩正樹撮影)
福田昭夫衆院議員も検察批判を続ける議員の1人だ。福田氏は地元、栃木県日光市内でのパーティーの席上、特捜部の捜査をやり玉に挙げ「明らかに検察の暴走だ。別件逮捕だ。あくまでも逮捕をして、自白を強要させる、そういう取り調べはもうやめるべきだ」と批判を加えた。
「民主国家にふさわしい検察制度にしていかなければならない。私はそういう思いで石川君の支援をしていこうと考えている」。このように述べて取り調べの全過程を録音・録画する可視化法案(刑事訴訟法改正案)の必要性を訴えた-のだった。
恣意的なのはどちらか
捜査の全面可視化がこうした文脈で持ち出されること自体、注意を要すると思う。しかし、考えてみてほしいのだが、検察という機関は犯罪があると思われる場合には国民に代わって捜査をして真実の解明を図り、犯罪を訴追する機関である。
民主党の国会議員のこうした動きは検察が担う民主主義国における重要な職責を忘れて党利党略に流され、検察にプレッシャーを加えたものといわざるを得ない。まして、政府の一員である政務官や総理大臣までがこうした検察批判に安易に唱和する光景はお粗末かつ不見識だろう。
民主党議員が盛んに口にする「恣意的な捜査」という文言も妥当なものだったのだろうか。むしろ恣意的だったのは民主党議員だったのではないだろうか。
小沢幹事長には依然として「政治とカネ」をめぐる疑問が突きつけられたままだ。不起訴となった今も、疑問が払拭(ふつしよく)されたとは到底言えない。
そもそも論でいえば、なぜ「陸山会」があれほどの不動産を所有するのだろう、という疑問に始まるが、政治資金管理団体が不動産を保有すること自体永田町では異例なことだ。小沢幹事長の政治活動と具体的にどう結びつくのか、にわかに分からない物件だってある。
また小沢幹事長は「事務所費問題」が起きた平成19年2月、個人名義で登記されている世田谷区深沢などの不動産について「陸山会」が政治資金で取得したものと説明していた点も見逃せない。記者会見を開き「陸山会代表、小沢一郎」と「個人 小澤一郎」の間で交わされた確認書を報道陣に公開しながら自分の透明性、健全性を強調していた。
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2010.2.14 18:00
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報道陣の質問に応じる民主党の小沢一郎幹事長=4日午後、東京・永田町の民主党本部(古厩正樹撮影)
その確認書とは、個人である「小澤一郎」が一切の権利主張をしない-という内容。確認書に署名した当事者はどちらも小沢幹事長本人だった。
法人格がなく登記することができない資金管理団体に変わって便宜的に個人名義で登記しただけで不動産購入の正当性を強調したものだが、この確認書は後になって会見直前にパソコンで作成されたものと明らかになっている。これでは小沢幹事長側は記者会見を使ってウソの情報を報道機関にリークしたことになるのではないか。
不動産取得の原資についても小沢幹事長側の説明は二転三転した。三重県桑名市の中堅ゼネコン「水谷建設」の裏金5000万円かどうかが捜査では焦点となり、水谷側の「渡した」という供述に対して、石川被告は「受け取っていない」と一貫して供述したことになっている。
どちらが正しいのか。これはこれで重要だが、仮に水谷側の供述の信憑性をひとまず置いて考えてみても、政治資金からタンス預金、遺産や個人資産、融資、家族の預金…と次々と出てくる小沢幹事長側の原資の説明には「一体真実は何なのか」と誰もが思ったことだろう。
多数に及ぶ不動産取引において税法上の処理は問題ないのか、という疑問も浮かぶ。一例を挙げると、妻名義の預金を使って小沢幹事長が自分名義の不動産を取得した場合、それは贈与になるのではないか。今回の事件で、小沢幹事長は不起訴となったが、「政治とカネ」をめぐり疑問は尽きないのだ。そして小沢幹事長から納得できる説明は未だないのである。
可視化がもたらす害悪
今回の事件を「政治主導vs霞が関」などと捉える向きもあるが、それ自体が政治的な構えだと思う。まして民主党が掲げる捜査の全面可視化など、国民的な議論もなしに進められる極めて危ない動きだと憂慮せざるを得ない。真相究明や犯罪の訴追といった国民の負託を捜査機関が担っていけるのか、おおいに疑問だからだ。
断っておかねばならないが、よくテレビドラマで取調室の傍若無人な捜査官の姿が映される。取り調べでは理不尽な罵詈雑言が浴びせられ、脅迫や暴行、甘言まがいの取り調べが連日続くとイメージされがちだ。確かにそういう調べも現実ゼロではない。それが許されないこともいうまでもない。