2009年11月28日(土) 山梨日日新聞
1ドル84円台に急騰 県内輸出関連会社は・・・
「減収」「痛手」と恨み節 旅行業界追い風期待
一時84円台まで急騰した27日の円相場が、山梨県内では輸出関連製品の売り上げに頼る製造業や下請け企業などから、収益や受注の減少を懸念する声が上がった。
長引く不況やデフレに追い打ちを掛けられた格好で、「円高による輸出不振が、景気の二番底を誘引する」という悲鳴さえ聞こえてくる。一方、旅行業界は追い風と受け止め、年末年始に国内から海外に行き先を変える人が増えるとみている。
金融機関の為替コーナーは、たくさんの外貨を手にしようと、多くの人が訪れるなど、悲喜こもごもの反応だった。
「コストダウンのため海外で生産する流れが加速してしまう」。エノモト(上野原市)の担当者はショックを隠しきれない様子。自社製品の輸出のほか、大手メーカーが輸出用製品に使う電子部品を製造する中、円高による輸出不振の影響を受けるメーカー側から、価格引き下げの求めが強まることを懸念しているためだ。
大手製造業の下請けをしている中小企業にも衝撃が走る。韮崎市の精密部品加工会社の経営者は「大手が痛手を受けると、受注減となってしわ寄せを受けるのは下請けの中小企業。体力が続かない業者も出てくるのではないか」とため息をつく。
県内には自動車や家電メーカーの下請け企業が多いため、不況下での円高は、停滞する県内経済にさらなる追い打ちとなる恐れがある。
県中小企業団体中央会の内藤悦次会長は「不景気とデフレで企業の体力が落ちきっている中、円高はさらに不況を長引かせる可能性がある」と指摘。「景気の二番底に陥らないためにも、政府には抜本的な景気浮揚
策を求めたい」と話す。
横内正明知事は同日、「県内産業の4分の3は機械電子産業で、輸出への依存度も高く、県内経済への影響が懸念される」とコメントした。
一方、円高は海外旅行者にとっては有利になるため、旅行業界にとっては追い風となる。
YBS T&L(甲府市)によると、円高基調を受け海外旅行の人気が高まっていて、一部の旅行では日程を追加する好調ぶり。担当者は「本年度前半の新型インフルエンザによる影響をカバーできそう」と期待する。