【主張】拉致と鳩山政権 圧力重視の姿勢忘れるな
2009.11.23 02:50
このニュースのトピックス:鳩山内閣
鳩山由紀夫内閣発足から2カ月以上たつのに、拉致問題の方針がはっきりせず、被害者家族らの不安を募らせている。
17日、衆院選後初めて開かれた超党派の拉致議連総会では、「政府の対応が生ぬるいなら、圧力に重点を置くよう要請するのが議連の役割だ」(安倍晋三元首相)などと、鳩山内閣のあいまいな対応を批判する声が相次いだ。
家族会の増元照明事務局長は20日の自民党の拉致問題に関する特別委員会で、「政府の対策が不透明なうえ、解決に向けた基本方針が明示されていない。家族は不安だ」と訴えた。当然である。
鳩山首相は所信表明演説で、拉致問題について「考え得るあらゆる方策を用い、一日も早い解決を目指す」と述べた。拉致問題対策本部の初会合でも、「今まで以上の体制で早期解決に向けて努力しなければいけない」と取り組みを強化する姿勢を示した。
だが、同対策本部に情報室が新設され、職員が拡充された以外、具体策は示されていない。
オバマ米大統領は日米首脳会談後の講演で、北朝鮮と近隣諸国との関係正常化について「拉致被害者について日本の家族が完全な説明を受けて初めて可能になる」と述べ、北に拉致問題解決を促す強いメッセージを発した。しかし、鳩山首相は首脳会談で拉致問題を議題に取り上げなかった。また小沢一郎民主党幹事長も拉致問題解決に意欲的とはいえない。
これでは、拉致問題についても「言葉だけが踊っている」と言われてもやむを得まい。
自公政権では、「すべての拉致被害者の即時帰国要求」「厳格な法執行の実施」「さらなる制裁措置の検討」など6項目が踏襲されてきた。鳩山内閣も、この圧力重視の姿勢を明確に示すべきだ。
オバマ大統領は離日後の米韓首脳会談で、北朝鮮の核完全放棄と引き換えに大規模な経済支援、国交正常化などの見返り措置を実施する李明博大統領提案の「一括妥結方式」を支持した。ボズワース米特別代表が来月8日に訪朝することも明らかにされた。
国連総会第3委員会(人権)で19日、北朝鮮に拉致問題の解決を強く求める人権決議案が日本や韓国などの賛成多数で採択された。今回も、中国とロシアは反対に回った。拉致、核問題解決のためには、日米韓3国の強固な連携がますます必要である。