【主張】同盟再検討発言 軽はずみと責任回避憂う
2009.11.1 03:14
このニュースのトピックス:民主党
鳩山由紀夫首相が参院代表質問への答弁で「日米同盟のあり方の包括的レビュー(再検討)をしたい」と発言した。
首相はその後の会見で思いやり予算、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設、地位協定などの問題の「解決策を調査すること」と説明した。しかし、日本の外交・安全保障の基軸である同盟の包括的再検討といえば、日米安保条約体制の見直しを意味しかねず、重大な発言といわざるを得ない。
「解決策の調査」が真意だとしても、首相は軽はずみな発言を厳に慎むべきだ。同時に、普天間問題などをこれ以上先延ばしせず、直ちに決着させる必要がある。
唐突な「レビュー」発言は政府内も動揺させた。直後に平野博文官房長官が「同盟という言葉が走ると別の意味の問題までからむ。首相発言はそんな趣旨ではない」と説明し、「同盟見直し」ではないと強調した。これをみても発言の危うさは明らかだろう。
問題は言葉の軽さだけではない。オバマ米大統領には「日米同盟が基軸」と言い、日中韓首脳会議では「米国に依存しすぎていた」と語った。持論の東アジア共同体構想に「米国外し」の批判が浮上すると、慌てて「米国の関与が重要」と述べるなど、首相発言には内容のぶれも少なくない。
とりわけ普天間問題は緊急性が高い。米側はオバマ大統領訪日までに決着を求めている。岡田克也外相の嘉手納基地統合案に対しては、米国防総省が「運用上も不可能」と受け入れを拒否し、地元民も「断じて容認できない」と反対しているのが現状だ。
沖縄県の仲井真弘多知事も「基地問題をレトリック(修辞)で処理しようとするのは軽い」と政府の不決断を批判した。この段階に至っても、首相が「県民の意思に沿った形で結論を出したい」と語るだけで決断の時期も方向も示そうとしないのは極めて深刻だ。政治主導を掲げながら、責任回避としかいいようがない。
在日米軍駐留経費を負担する思いやり予算や地位協定も相手があっての問題だ。改善をめざすにしても、同盟の信頼関係を損なわないように入念な準備と配慮の下で進める姿勢が不可欠だろう。
その場その場の思い付きのような発言では、国民は来年の日米安保50周年を安心して迎えられない。首相は言葉よりも行動で「同盟基軸」を実践してほしい。