【主張】拉致問題 黄氏来日で日米韓連携を
2009.10.28 03:12
このニュースのトピックス:鳩山内閣
鳩山内閣で初めての拉致問題対策本部の会合が開かれ、中井洽(ひろし)拉致問題担当相は22~24日の訪韓で、韓国に亡命した黄長●(ファンジャンヨプ)元朝鮮労働党書記の日本招致を韓国側に要請した経緯を説明した。
中井氏は会見で「相手方(韓国政府側)に受けていただいた。ただ、直接(黄氏に)会えなかったので、日程調整をお願いしている」と述べた。一方、黄氏は本紙の取材に「(拉致問題は)よく知らない」といいつつ、「私が日本に行くことに名分があり、日本国民や日本政府の助けになるのなら行く」と述べている。
まだ流動的な部分も残っているが、黄氏の意思次第で来日が実現する可能性が高まってきた。
黄氏は「金正日(総書記)の統一戦略は日韓、米韓の関係を断ち切り、それぞれ仲違いさせることだ。
韓国にとって、日米との関係が何よりも重要だ。独島(日本名・竹島)問題で日韓関係を悪化させている場合ではない」とも語っている。
黄氏の来日は、拉致や核問題で頑(かたく)なな態度を取り続ける北朝鮮に対して日韓の強い連携を示すメッセージとなろう。ただし、黄氏は86歳の高齢でもあり、健康面や警備面で万全の態勢が必要だ。来日の実現に向け、詰めの努力を日韓両国政府に求めたい。
黄氏は1997年に亡命後、対北融和政策を進める金大中、盧武鉉両政権下で、自由な海外渡航を制限されてきた。2004(平成16)年、衆院外務委員会が黄氏を参考人として日本に招請したが、韓国政府は許可しなかった。
これに対し、現在の李明博政権は北に対して厳しい姿勢を取っている。今回、黄氏来日が実現の方向で進んでいるのは、韓国政府の姿勢の変化も影響している。
最近、李大統領は努めて対日関係に気を配っているように思われる。今年8月15日の光復節の演説では、昨年触れた日本の歴史問題に言及せず、未来志向の姿勢を示した。対北朝鮮問題などで日韓の協力が重要だという現実重視の判断があったためとみられる。
一方、クリントン米国務長官は北朝鮮と対話の用意はあるとしつつも、6カ国協議への復帰だけでは制裁を解除する考えがないことを示し、厳しい対北姿勢を変えていない。拉致、核問題の早期解決のためには、日米韓3国の連携を強めながら、中露の協力を求める外交努力が必要である。
●=火へんに華