興味深いデータがある。
民主党中心の政権となった場合、国内総生産(GDP)の実質成長率は、自公による連立政権が継続された場合と比べ、軒並み落ち込むとの試算が出ているのだ。野村証券金融経済研究所の予測では、民主党中心の政権になれば今年度後半のGDPは0・4%押し下げるとしており、主要因は公共事業の削減だという。
同研究所の木内登英チーフエコノミストは「短期的には、景気に与える効果はマイナスになる。公共投資に依存していた地方ではより影響が大きい」といい、長期的な観点でも「削減分を経済効果の大きい景気浮揚策に回していければ、公共事業削減の効果があったとはいえますが…。子ども手当など子育て支援策が国民生活の向上にどうつながるかも、明確に示す必要がある」と指摘する。
ほかには,もしCO2 25%削減対策をこうじれば,さらに-3.2%の押し下げが加算されることになる。
【日本の議論】八ツ場ダム建設中止は得なの? 損なの? 公共事業見直しで無駄遣いは解消するか (1/5ページ)
2009.9.22 18:00
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八ツ場ダムの建設工事現場
民主党が、税金の無駄遣いとしてやり玉に挙げる公共事業。前原誠司国土交通相は、早速「八ツ場(やんば)ダム」(群馬県)と「川辺川ダム」(熊本県)の建設中止を表明した。
民主党は公共事業の見直しで、1・3兆円を節約したい考えだが、すでに総事業費の約7割が投入された八ツ場ダムは、関係自治体への補償などから「造ったほうが安上がり」とも。地元では建設継続を求める動きが過熱しており、ダム事業に翻弄(ほんろう)され続けた人口6千人の田舎町が政権交代で揺れている。
公約遂行…地元は猛反発
「マニフェストに書いてありますから中止します」
前原国交相は今月17日未明、国交省に初登庁し、待ちかまえた報道陣にあっさり、八ツ場ダムの建設中止を明言した。
8月末の衆院選で大勝した民主党は、マニフェストでうたった「5つの約束」の1番目に、税金の無駄遣いの根絶を掲げ、八ツ場ダムの中止を名指ししており、今後の公共事業に対する鳩山政権の姿勢を国民に示した形だ。
八ツ場ダムは、治水や首都圏への水供給などを目的に、平成27年の完成を目指している多目的ダム。建設場所となる群馬県長野原町では、道路の付け替え工事や水没する同町内の5地区住民の移転作業などが着々と進められている「現在進行形」のダムだ。そのため、関連自治体や地元住民には動揺も広がっている。
前原国交相の発言を受け、同県の大沢正明知事は17日、「言語道断で、極めて遺憾」とコメント。ダムの下流にあたる埼玉県の上田清司知事も「ダムは自民党とではなく、日本国政府と契約した。政府が契約破棄する場合は相当な理由がなければできない」と怒りが納まらない。
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2009.9.22 18:00
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八ツ場ダムの建設工事現場
地元住民もまた、発言への対応を加速させており、同町議会は「八ツ場ダム建設事業の継続を求める意見書」を可決した。
建設中止の撤回を求めて発足した「八ツ場ダム推進吾妻(あがつま)住民協議会」は18日、2回目の会合を開いて今後の対応を協議。前原国交相も、地元の動きは気にかかるようで、「現地に行って色々な話を伺って、どういった補償措置をとるのかが必須の条件となる」とも述べ、地元住民らと話し合う考えだ。
見直しで景気後退も
前原国交相は就任会見で、川辺川ダムについても中止を明言。「八ツ場ダムと川辺川ダムは今後の河川行政、公共事業のあり方を見直していく入り口」と、さらなる公共事業の見直しにまで触れた。
公共事業の見直しは、国交省に限った話ではない。「アニメの殿堂」とも呼ばれ、今年度の補正予算に117億円が盛り込まれた文化庁の「国立メディア芸術総合センター」。
鳩山由紀夫首相は、緊急性や経済性の低い事業に対し、一部予算の執行停止をする基本方針を固めた。民主党から「無駄遣いの象徴」との批判を浴びた同センターも対象になる可能性がある。
同党がマニフェストで発表した試算によれば、これら大型直轄事業など公共事業費7・9兆円の全面的な見直しを進めることで、1・3兆円を浮かせることが可能という。
今後4年間は消費税率を上げないとする一方で、年額31万2千円の「子ども手当」創設など主要政策を実施するために、平成22年度だけでも7・1兆円、25年度には16・8兆円の財源が必要で、予算の組み替えによって生み出したい考えだ。
ただ、国の公共事業は自公政権だった近年でも削減傾向が続いてきた。景気が冷え込んでいる影響から、民間企業や個人からの工事の受注が伸び悩む建設業者は少なくない状況で、特に公共事業に頼るところの多い地方の業者にとっては、公共事業の削減がそのまま死活問題につながってくる。
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2009.9.22 18:00
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八ツ場ダムの建設工事現場
興味深いデータがある。
民主党中心の政権となった場合、国内総生産(GDP)の実質成長率は、自公による連立政権が継続された場合と比べ、軒並み落ち込むとの試算が出ているのだ。野村証券金融経済研究所の予測では、民主党中心の政権になれば今年度後半のGDPは0・4%押し下げるとしており、主要因は公共事業の削減だという。
同研究所の木内登英チーフエコノミストは「短期的には、景気に与える効果はマイナスになる。公共投資に依存していた地方ではより影響が大きい」といい、長期的な観点でも「削減分を経済効果の大きい景気浮揚策に回していければ、公共事業削減の効果があったとはいえますが…。
子ども手当など子育て支援策が国民生活の向上にどうつながるかも、明確に示す必要がある」と指摘する。
建設中止で840億円増加?
税金の節約を目指すはずの公共事業の見直しが、八ツ場ダムの場合は、逆に税金を多く費やす事態になる可能性も指摘されている。
八ツ場ダムは、総事業費4600億円。そのうちすでに3210億円が投入された。現時点で建設を中止すれば、残されたダム本体工事関連費620億円については削減できる。さらに、ダムの維持費も必要なくなるなどの効果が期待できるという。
しかし、特定多目的ダム法では、建設を中止した場合に、水供給を目的に事業費を拠出してきた下流の1都5県に対し、費用を返還しなければならなくなる。その額は、実に1460億円。さらに、地元住民に対する今年度以降の生活再建関連費770億円も必要で、合わせれば2230億円にもなるのだ。
東京都の石原慎太郎知事は、中止になった場合には都が負担した費用について「当然、返還請求しますよ」と強調。完成までに必要な残事業費1390億円を大きく上回る支出になる。また、すでに建設された橋脚や道路などの処遇によっては、さらなる負担がのしかかることもある。
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2009.9.22 18:00
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八ツ場ダムの建設工事現場
一方で、八ツ場ダムの建設に反対してきた市民団体などは、事業を継続した場合に、費用がさらに増額される可能性を指摘し、中止しても1都5県が拠出した事業費を全額返還する必要はないと主張。事業を継続した方が、730億円多くかかると見積もる団体もある。
「八ツ場あしたの会」(前橋市)の渡辺洋子事務局長は「本体工事を停止させるのははじめの一歩。環境再生、住民の生活再建までしっかり進めてほしい」と話す。
長い反対闘争「中止今さら…」
八ツ場ダムの地元、長野原町の住民の多くは今、建設中止に反対の声をあげている。ただ、同町の住民が、ダム計画の当初から建設賛成だったわけでは決してない。
八ツ場ダムの建設計画が持ち上がったのは、半世紀以上も前の昭和27年。国指定名勝「吾妻渓谷」の一部や800年以上の歴史を誇る秘湯「川原湯温泉」がダムに沈むことなどから、反対の声が相次いだ。
温泉街で旅館を経営していた竹田博栄さん(79)は、反対運動の一部始終を8ミリカメラに収めてきた。
当時は30代だったが、中心メンバーとして参加。温泉街がある川原湯地区は、最後まで反対の立場を崩さず、昭和40年代には、「八ツ場ダム建設反対」など徹底抗戦を訴えるプラカードを持った地元住民らの集会が各地で起こった。
問題が長期化すると、運動に疲れた住民の中から賛成派も出始めた。親族同士で賛成派と反対派に別れ、いがみ合い、罵声(ばせい)を浴びせ合う姿もあった。反対運動の継続が困難になり、昭和62年、現地調査を受け入れる苦渋の決断をした。
竹田さんは4年前、50年以上続けた旅館を閉め、隣接の中之条町に移住した。水没する予定の旅館に膨大な改修費はかけられず、営業継続は困難だった。
「ダムを造ることで問題の終結が見えたところなのに、今さら中止といわれても」。自身が撮影したビデオを見るたびに、昔のことを思いだし、民主党の態度に悲しさや怒りを覚えるという。
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2009.9.22 18:00
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八ツ場ダムの建設工事現場
同様な理由から、温泉街では昭和40年代以降、大規模な改修がなされていない旅館がほとんど。設備のとぼしさから客足が遠のく悪循環を生み、最盛期は18軒あった旅館も、営業を続けるのは7軒にまで減った。
そのため、旅館は今の場所で営業を続けようにも、建て替えや改修に膨大な費用が必要となる。代替住宅地に移転したり町外に移住した住民も多く、地元は新たな問題を抱えることになる。
鳩山首相が“逃げた”?!
八ツ場ダムの建設中止をマニフェストに掲げながら、民主党がとった「ある行動」が、地元住民の怒りをさらに大きくした。
同町を含む衆院群馬5区では、自民党の現職、小渕優子氏に対する民主党の対立候補が注目されていた。小沢一郎幹事長が代表当時に国替えが噂された際には、同区を地盤とする自民党県議らから「小沢さんが来て、八ツ場ダムの是非にきっちり決着を付けるべきだ」との声も上がったほどだった。
しかし、昨年8月、党幹事長だった鳩山代表は八ツ場ダムを視察し、「社民党が候補者を立てるのであれば協力したい」と表明。社民党候補を支援する形でお茶を濁した。
公示期間中に群馬県内を訪れた鳩山首相は、八ツ場ダムが不要であることを訴えながらも、同区内には立ち寄らず。連立政権を見越した選挙協力とはいえ、地元住民に八ツ場ダムの是非を問うべき選挙の場から、“逃げた”とも受け取られかねない。
「マニフェストで国民に約束した以上、中止しなければ政策の実行力が疑われる」とは、ある民主党の衆院議員。政権交代を実現させた民主党にとって、「実行力」と「住民重視」のはざまで、八ツ場ダム事業が政権担当能力の試金石になりそうだ。
【八ツ場ダム】6都県が中止撤回を確認
2009.9.25 19:13
このニュースのトピックス:地方自治
前原誠司国土交通相の八ツ場ダム(群馬県)建設中止方針に対し、事業費を負担している1都5県の担当者が25日、埼玉県庁で連絡調整会議を開き、そろって中止方針の撤回を求め、今後も関連情報を共有していくことを確認した。
埼玉県河川砂防課によると、会議には6都県の担当課長ら約20人が出席し、国の動向などについて情報交換。各都県の知事が国への要望活動を効果的に行うため、今後も担当者レベルで情報共有や意見交換を積極的に行うことを決めた。会議は必要に応じて不定期に開くという。
6都県の知事は、前原国交相が就任直後にダム建設中止を明言した後、建設継続や中止撤回を求める考えを相次いで表明。前原国交相は、23日に現地を視察した後も、建設中止の方針に変更はないことを強調している。
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