別に岡山出身だからではないが,吉行淳之介の本は
よく読んだ。
少しシャープな感じの短編とでもいうのだろうか?。
向田邦子が直木賞を取って。
短編と言えば,向田邦子になった。
といってもドラマ脚本は一本も読んでいない。
思い出トランプの中にも,伏線が張り巡らされて,それが
1つにまとまってくる。エッセイしかり
サラサラと流れるような調子でテンポがよい。普段着で日常を
バッサリ切り取っていく。舌を巻く。
なかなか,こうした舌を巻く文章に出会えない。
消しゴム(講談社文庫 眠る盃 に収録)
体の上に大きな消しゴムが乗っかっている。
消しゴムは,はじめ畳一畳ほどの大きさだった。除けようとすれば除けられるのだが,ほろ酔
いでソファに寝そべり,毛布でも掛けようかなと思っていたところなので,ふんわりと軽い重さ
はかえって心地よく,除けるのが惜しかった。
それに消しゴムの消毒くさい冷たい匂いは,ついさっきまで騒いでいた穴ぐらのスナックの,酒
と煙草とにらレバ炒めとししゃもを焼く煙で馬鹿になった鼻を奇麗にしてくれそうな気がする。
体のうえの消しゴムは,ふくれあがってマットレスの大きさになっている。・・・・・
・・・・・そして,ストーブのガス漏れに気がつく・・・
キャベツの汚れた皮を一枚むいたらガスが匂った。抽斗の中の畳んだハンカチも広げると匂ったし
ハンドバックの中の小銭入れもパチンと開けるとガスが匂った。
本当に恐ろしくなったのは,それからである。
と,落ちも付いている。(笑)
うまい文章は,読んでいて気持ちがよい。七五調のリズムが心地よい。
向田邦子がふと浮かんで。
結局,引用になった。