物語要素事典
両性具有
★1.男でも女でもある存在。あるいは、男でも女でもない存在。
『セラフィタ』(バルザック)
スウェーデンボルグの従弟セラフィッツ男爵の妻が、天使霊セラフィタ(セラフィトゥス)を身ごもったのは、一七八三年のことだった。
セラフィタは人間の肉体を持ち、ノルウェーで生まれ育ったが、美少年とも美少女とも見られる容姿だった。牧師の娘ミンナはセラフィタを男性と思い、野心家の青年ウィルフリッドはセラフィタを女性と思って愛した。
しかしセラフィタは二人の愛をしりぞけ、十九世紀の最初の夏のある日、地上の肉体を捨てて昇天した。
『変身物語』(オヴィディウス)巻4
水の精である少女サルマキスが、美少年ヘルム=アプロディトスを恋する。彼女は、泉で泳ぐヘルム=アプロディトスに抱きついて、「神様、永遠に私を彼から引き離さないで」と願う。
神は彼女の願いを聞き入れ、二人の身体は融合して一つになる。ヘルム=アプロディトスは泉に入る時は男だったが、出て来た時は「男女(おとこおんな)」になっていた。
『メトロポリス』(手塚治虫)
ロートン博士が人造細胞から創った人間は、世界一美しい顔の大理石像「ローマのエンゼル」を、モデルにしていた。
ロートン博士は、性を持たぬ人造人間に、男とも女ともつかぬ「ミッチイ」という名前をつけた。ミッチイの喉の奥にはボタンがあり、これを押せばミッチイは少年から少女に、また少女から少年に変った。
★2.両性具有者と間違えられた男。
『ふたなり』(落語) 夜道を歩く猟師が、若い女と出会う。女は「不義の子を身ごもったので、死なねばなりません」と言う。
猟師は同情しつつも、女が首を吊る手伝いをしてやるうち、誤って自分が縊死してしまう。女はそれを見て、死ぬのがこわくなり、持っていた書置きを猟師の懐に入れて、どこかへ行ってしまう。
翌日、検死の役人が「不義の子を身ごもり」という書置きを見て仰天し、猟師の息子に問う。「世に『ふたなり』と申して男女両性の者があると聞くが、お前の父は男子か?女子か?」。息子「りょうしでございます」。
*原始時代の人間には、男・女・両性具有の三種の性があった→〔人間〕1bの『饗宴』(プラトン)。
*男性とも女性とも性関係を持つ男。両刀使い→〔性交〕9。
*男女両方の性質をあわせ持つ女神→〔男装〕1a。
半陰陽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/08/27 08:08 UTC 版)
(両性具有 から転送)
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快淫水好傳 第三編
半陰陽(はんいんよう,Intersexuality,hermaphroditism)は第一次性徴における性別の判別が難しい状態である。
目次
•1 概要
•2 生物学的位置づけ
•3 真性半陰陽
•4 仮性半陰陽
o4.1 仮性半陰陽の発生要因
o4.2 二次性徴
•5 自己・周囲の認知
•6 精神状態
•7 社会認知
•8 日本での法的な対応
•9 手術
•10 関連項目
•11 外部リンク
概要
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ふたなり(二成・双成)、両性具有(りょうせいぐゆう)、アンドロジニー (androgyny) 、インターセックス (intersex) 、ヘルマプロディトス (Hermaphroditus) とも呼ばれる。 この性質を持つ人を、半陰陽者、インターセクシュアル(intersexual 、ISと略すことも)、ハーマフロダイト 、アンドロギュノス (Androgynous) 、という。
医学的には性発達障害 (Disorders of Sex Development:DSDs) に分類され、日本の当事者間においては、性分化・発達障害という呼称が提唱されている。
半陰陽は、遺伝子、染色体、性腺、内性器、外性器などの一部または全てが非典型的であり、身体的な性別を男性や女性として単純には分類できない状態である。
一般的には、男性と女性という二極しかないとされるが、性別を後天的なものだとする一部のジェンダー論などにおいては、単純には分類できない多様な性別のあり方があるとし、こうしたことから、この半陰陽を男女のどちらにも属さない「第三の性」と位置づけるという考えもある。
陽と陰、男と女といった対立的にして補完的なものの調和を重視する陰陽思想などに基づいて、半陰陽を理想的な性別のあり方とする考え方もあった。
生物学的位置づけ
半陰陽の原因としては、性染色体に稀なものが見られる場合や、胎児の発達途中における母体のホルモン異常が引き起こす場合などがある。また、モザイク体と呼ばれる、性染色体の構成の異なる細胞を併せ持つ場合もある。
男女両性の特質を中途半端に兼ね備える場合や、遺伝子上の性別と肉体的それが通常の組み合わせとは反対の場合もある。
両性の性腺を兼ね備えたものを真性半陰陽、遺伝子と外見とで性別の異なるものを、仮性半陰陽と呼び、後者は性腺上の性別によって、男性仮性半陰陽、女性仮性半陰陽として区別される。
身体的には、女性仮性半陰陽の場合、膣が塞がっている場合が多く、また陰核が通常よりも肥大し、これが男性器(ペニス)と間違われることがある。男性仮性半陰陽では、尿道下裂や停留睾丸を併せ持った状態のこともある。
性染色体異常
•クラインフェルター症候群:外性器・内性器など通常の男性形をとる。精子の減少、乳房発達や男性更年期障害、骨粗鬆症、二次成長の欠如などが見られることがある。
•ターナー症候群:外陰部は女性型
•XX男性:外陰部は正常男性を示すが、尿道下裂
•XYY男性:外陰部は正常男性
二次性徴
その根本的な原因により、二次性徴の表れ方は様々である。
性腺の働きが正常で遺伝子的な異常の無い、単純な外性器の発達不全の場合には、二次性徴期に通常に性ホルモンが分泌され、(外見とは逆の)本来の二次性徴が発現するといわれ、この場合にはこの肉体的変化で気付くことが多い。
また、男性仮性半陰陽の中で、睾丸が女性ホルモンのみを分泌する場合には、女性としては十分とはいえないまでも乳房の発達が起こるとされ、この様な場合には男性ホルモンが働かないために陰毛などが発生しないともいわれる。
自己・周囲の認知
仮性半陰陽の場合、外見的には表に出ている男性または女性そのものであることも少なくないため、周囲はおろか当人も全くそれに気づかない場合もある。精巣や卵巣も形成され、外見通りの性別に(たとえ遺伝子情報のそれと反していても)成人する。
たとえば男性仮性半陰陽(遺伝子は男性だが女性の形態をとる)の場合、本人もそれと知らずに結婚、一生を女性として過ごすこともある。
ただしこの場合、膣はあるものの子宮が痕跡的で少なくとも機能しないため、自然な妊娠はできない。少なくとも現在のところ、男性仮性半陰陽の女性が出産にまで至った事例は知られていない。
クラインフェルター症候群などの男性は極端に精子が少ないため、自然的に受精させることはほぼ不可能だが人工授精での受精は可能である。不妊治療の過程で自分が半陰陽であることを知り精神的な打撃を受けることもある。
精神状態
女性学などで用いられるジェンダー論においては、「男と女」という概念は、実際には精神的にも肉体的にもはっきりと二分できるものではなく、男性的、女性的というのは社会の中で形成されるため、逆に言えば、必ずしも肉体の性別と精神面の性別は一致しない、とする考え方もある。
しかし、「男性的女性的というものが社会の中で形成される」とすることについて、この説は必ずしも通説とは限らない。
「ジェンダーアイデンティティ」を定式化したジョン=マネーの研究に関しては、ハワイ大学のミルトン=ダイアモンドによって、その定式化を支持する実験の大きな不備が指摘されており、現在のところ性自認が社会的に
形成されるものか生得的なものであるかについては「分からない」とするのが科学的に最も良心的であると考えられる。
また、半陰陽の状態を持つ人々について、
どちらの性自認を持つか、特に日本において信頼できる調査はされておらず、これに関しても「分からない」とするのが良心的であろう。
そもそも、半陰陽の状態を持つ人々に関して問題になるとしても、それは社会的性差(ジェンダー)の問題ではなく、性自認(ジェンダーアイデンティティ)の問題であると思われる。
半陰陽の場合、その性がどちらにあるかはその成り立ちや環境によりまさに千差万別である。
どちらかの性別での生活に精神的苦痛を憶え、裁判により戸籍上の性別、続柄、名称の変更を求める事例は少ないながら存在し、決して多くはないが医学的な証明のもとに本人の主張が認められ、戸籍の訂正が認められた例は現実に存在する。
ちなみに身体的に正常な性別に属していないので、概念的に性同一性障害にはならない。
社会認知
社会的には現在、半陰陽の状態を持つ人々は差別以前に日本ではほとんど認知されていない。
明治以前には少なくとも「ふたなり」という単語が存在する程度にはそれを認知していた。
しかし、明治になって西洋式の考えが導入された時点で、生殖能力に欠ける事が多く「産めよ増やせよ地に満ちよ」のできない、あるいは難しい半陰陽の状態を持つ人々は社会から無視され、単純に先天的疾患と分類するようになってしまったとも指摘される。
またごく最近では、性的ファンタジーとしての両性具有ではない、半陰陽の状態を持つ人の現実的な問題を描いた漫画『IS』(著:六花チヨ、講談社刊)や、半陰陽当事者である漫画家新井祥の作品などが話題となり、
以前より少しは半陰陽の状態を持つ人々(インターセクシャル)の存在が認知されるようになった。が、これらの作品でも半陰陽について分かりやすい解説を加えているにもかかわらず、その概念が理解できず、未だに「性同一性障害」と混同している人は少なくない。
日本での法的な対応
出生直後に外見上の性別が不明瞭である場合、出生届等で性別留保という手続きをすれば戸籍には性別は記載されない。