【主張】イラク油田権益 日本の国際貢献が効いた
2009.8.30 02:23
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日本企業がイラク南部の「ナシリヤ油田」の開発権益を獲得する見通しになった。新日石と国際石油開発帝石、日揮の3社連合が開発提案していた鉱区で最終的にイタリア企業に競り勝って、イラク政府との基本合意に達した。
イラクは世界3位の石油埋蔵量を誇る。原油調達先の多様化だけでなく、エネルギー安全保障の観点からも重要な成果といえる。久々の大型自主開発油田として期待したい。
イラク油田が外資に開放されるのは37年ぶりとなる。イラク政府にとって石油収入は経済再建にも欠かせないが、自前で油田開発するには資金や技術がまだ不十分なため、開発の権利を外資に開放することを決めた。
日本政府はイラク復興に無償・有償合わせて50億ドルの資金供与を決め、国際協力機構(JICA)が製油所や港湾などのインフラ支援にあたっている。
自衛隊も昨年末まで5年間にわたり陸自、空自による人道復興支援で着実な実績を残した。シャハリスタニ・イラク石油相もこれらの活動に感謝を表明した。今回の権益獲得の背景には、こうした日本の国際貢献があることを忘れてはなるまい。
ナシリヤ油田は、日本の1日の国内消費量の約12%に相当する日量60万バレルの原油生産が可能とされ、日本企業が中心となって開発する油田の中では過去最大規模となる。
日本政府は、2030年をめどに自主開発油田産の比率を現在の約19%から40%まで引き上げる目標を掲げている。
新興国や途上国の資源ナショナリズムの高まりで、市場は不安定化している。エネルギー有事の場合も考えれば、日本にとって安定的な原油供給を可能にする自主開発油田のメリットは大きい。
また、自主開発油田は相対で価格を決めることができるため、価格変動リスクを緩和できる。現在日本の輸入原油の大半は市場から購入されており、その時々の市場価格の影響を受ける。
中国やインドなどの新興国の経済発展や原油市場への投機資金の流入によって昨年、原油が高騰したことは記憶に新しい。
イラク情勢は現政権下で民主化に向かっているが、治安の安定や政府の人材不足、法整備などで国際社会の支援継続を求めている。日本もこれに応じて、インフラ整備や人材育成を含む民主化支援を続けていくべきだ。