左の上肺の部分にガンの病巣があります。
レントゲン写真を示しながら医師はそう言った。
長くて半年でしょう。
結核と同じ病院で診断され,早島の病院へ転院,それから
1年くらいしてからか
微熱が下がらないので,再び,倉敷の中央病院へもどり
検査を受けた。
以前に私は,十二指腸潰瘍の手術を受けたことがあって
看護婦さんから,人の中の身体はきれいだ。と聞いていた。
会社に病欠届をだして,中庄にある川崎医大の大部屋8人部屋に
はいったものの。入院中に8人のうち5人が
ガンでなくなった。
となりの50代の奥さんは,私は未亡人になる。未亡人。未亡人。
と夫のいないところで,つぶやいた。
向かいの笠岡から来た漁師さんは痛みが治まらない。鎮痛剤も
効かなくなり,センセイ。殺してくれ。殺してくれ。
と医師に懇願した。
屈強な身体もガンに体力を奪われ,目だけが異様に大きく見えた。
大の大人が痛みに耐えられず,声を上げる。
その痛みは,私も体験している。
川崎医大に転院する前,わたしは大阪の高石にある小さな病院へ
居た。春闘の時期で組合事務所でのビラの印刷,織り込みを終え
事務所に詰めていたのだが,午前5時頃,痛みに耐えられず
洗面所の流しで吐血した。
それから会社の寮に帰り待合室で横になり,病院が開くのを待っていたのだが
強烈な激痛に襲われ。
どうにもガマンできず,生まれて初めて救急車を呼んだ。
病院へ付き,しばらくして,何度も吐血。
どうやら十二指腸が破裂したらしい。(笑)
3時間ほど腹の中に棒を突っ込まれグリグリかき回されるような激痛。
身体がマヒしているのだろう。また平穏な時間が訪れ,それが何度も
繰り返される。破裂する予兆はあったのだが
ガマンした。
一度,破裂すると痛みが治まらない。横になっても足を絡ませる。
ベットの上で前かがみに膝を抱える姿勢をとる。
3時間おきの鎮痛剤も効かない。
そのうち夜も昼もわからなくなる。痛みだけは続いている。
意識が混濁してもうろうとする。
それが3日3晩続き,やっと納まる。